IT投資の新方程式

社員のチカラを企業力に――MSがユーザー企業のIT部門に願うことIT投資の新方程式

マイクロソフトの企業向け製品におけるキャッチコピーとしておなじみ(?)だった「People Ready Business」が変わろうとしている。新たに「Because IT’s everybody’s business」として、IT部門の社員力、ひいては企業力を高められるメッセージを発信するという。

» 2009年12月15日 10時00分 公開
[石森将文,ITmedia]

 現状、企業でITを利用するユーザーの多くが、普段からその業務においてマイクロソフト製品に触れていることだろう。そして製品や技術に関する情報収集のため同社のサイトを訪れた際(またはマイクロソフト製品のカタログなどを読んだ際)、「社員力を、経営力に。People Ready Business(以下、PRB)」というキャッチコピーを目にした人も多いのではないか。だがこの秋、変化をみせている。新しいキャッチコピーは「社員にチカラを。ITで企業力を。Because IT's everybody's business(以下、BIEB)」である――。

(見慣れた)people ready business(左)が、Because IT’s everybody’s businessに。よく見ると“IT”の部分が赤で囲まれている

「IT部門へのエール」であることを明確に

マイクロソフト セントラルマーケティング本部 カスタマーエンゲージメントグループ 統合マーケティングコミュニケーションマネージャ 鷲見研作氏

 ひと目で分かる違いとしては、英文、日本文ともに「IT」というキーワードが含まれること。マイクロソフト セントラルマーケティング本部の鷲見研作氏は「PRBでは、その対象として、財務の担当者やBDM(Business Decision Maker:経営の意思決定者。必ずしもIT部門の人材に限らない)層などを含んでいた」と前置きしながら、「BIEBは明確に、企業IT部門に対するメッセージだ。マイクロソフトは基本的に、法人向け製品に関するメッセージを、すべてBIEBの傘の下、発信する」と話す。

 このところの景気状況を振り返ると、多くの企業が、その業績に明るい兆しを見いだせないでいる。そしてそれは、マイクロソフト自身といえども、例外ではない。マイクロソフトの主な顧客、そしてユーザーであるのは企業IT部門だという認識のもと、「改めて、IT部門にエールを送る。言わば“原点回帰”」(鷲見氏)という狙いがあるという。

 もちろん、ブランディングの旗印を変えるきっかけとしては、新製品のローンチも影響していると考えられよう。「今年はマイクロソフトにとって、Windows 7はもちろんのこと、Windows Server 2008 R2およびExchange Server 2010という、IT部門にとって重要な意味を持つ製品のリリースイヤーだ」と、マイクロソフト セントラルマーケティング本部の西岡奈穂子氏は振り返る。加えて2010年前半には、SharePoint 2010やOffice 2010のリリースも控えている状況だ。

 実際、BIEBというブランドの正式なリリースに先立つこと約1カ月、2009年の9月には「ジョイントローンチ」として、上述した3製品の共同サイトが立ち上がっている。

新しいぶどう酒は、新しい革袋に

マイクロソフト セントラルマーケティング本部 カスタマーエンゲージメントグループ 統合マーケティングコミュニケーションマネージャ西岡奈穂子氏

 BIEBの旗艦となるサイトを訪れると、「マイクロソフトの法人向けサイト」という位置付けからイメージされるものより、かなりカジュアルな雰囲気となっており、意外に感じる人が多いかもしれない。

 そこでは“システム管理者の小林氏”や“製品設計担当の菊池氏”といった個人が今風のイラストで登場し、彼ら社員の能力に、IT(つまりここでは、マイクロソフトの製品ないしソリューションを指す)を“足し算”することで企業力を高める、というストーリーが表現されている。

 イラストで表現された登場人物は、現状ではフィクションだというが、「今後、ユーザー事例の掲載などを通じ、実在の人物も登場していく予定」(鷲見氏)だという。

 とはいえ、コスト削減やビジネスへの貢献を危急の課題として突きつけられているIT部門にとって、“ただ親しみやすい”というだけではそのサイトやブランドに、存在意義を感じられないだろう。

 BIEBというブランドが、そのサイトを通じIT部門に提示できる主なものは、「彼らの課題を解決し得るソリューションだ」と鷲見氏は話す。大きく「コスト削減ビジネスの成長グリーンIT」に分類され、紹介されるソリューション群は、さらに17の個別解としてIT部門に届けられる。

市場活性化にはカンフル剤も

BIEBサイトはカジュアルな雰囲気。このルック&フィールに落ち着くまで、多くの検討を重ねたという

 キャンパスノートにイラストを組み合わせたような、サイトのルック&フィールとは裏腹に、「出張(通信)費の削減」や「パンデミック対策」など、そこにはIT部門が頭を悩ませる課題が並ぶ。そして対VMware対Oracle DBなど、競合製品と比較したメッセージも目に止まる。

 「いたずらに競合比較を進めるつもりはない」と鷲見氏は話す。だが思わしくない景気状況が続く中、企業のIT投資意欲も鈍る傾向にあり、結果としてIT部門は運用に忙殺されがち、という現状がある。景気はいつか好転する。そしてその際にスタートダッシュを決められるのは、成長に備えた投資を怠らなかった企業であろう。業績との兼ね合いもあるだろうが、「ビジネスの成長につながる新規投資を行わないと、悪いスパイラルから抜けられないのでは」と鷲見氏は指摘する。

 BIEBサイトが提供するいわゆる比較広告も、そのためのカンフル剤になるのではないか。「すべてのユーザーにマイクロソフト製品がベストだと押し付ける意図はない。ただ、“自社に適したソリューションは何か?”と考えるきっかけを与えることで、企業向けITの市場、そしてユーザーである企業自身が活性化するきっかけになれば」と鷲見氏は話す。

 なお各ソリューションに関しても、提示するだけではなく、実装を望むユーザーに対しては、ホワイトペーパーを提供したり、パートナー企業(SIer)とのマッチングを図ったり、というサービスが提供される。

 ちなみに各ソリューションのパートナーとしてリストされた企業の多くはMicrosoft Certified Partnerの認証を得ているが、BIEBソリューションを提供していないパートナー企業は、たとえMicrosoft Certified Partnerであったとしても、ここにリストされないという。それだけユーザーにとっては“頼れる”企業になるといえるだろう。


 「マイクロソフトは、OSをはじめ、オフィスアプリケーションやサーバ製品群を持つ数少ない企業」と鷲見氏は話す。“Because IT’s everybody’s business”というワーディングには、その統合プラットフォームの良さを知ってもらいたい、という願いが込められているという。併せて西岡氏は「ITは社員の生産性を上げる。そして社員の生産性が上がれば、企業の成長につながる。そのための手段を、BIEBサイトを通じて提供したい」と、その思いを示す。

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