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自社メディア連合がもたらす地殻変動エコシステム・マーケティングの威力(1/2 ページ)

強力な自社メディアを持った企業が連合軍を組むことで、企業が消費者との直接の消費者と企業が直接つながりを強めることができる。エコシステム・マーケティングは、既存メディアの位置付けをも大きく変える可能性を秘めている。

» 2009年12月15日 08時00分 公開
[本荘修二,ITmedia]

 エコシステム・マーケティングは、1つの企業がほかの企業や消費者などとつながった大きな生態系を作り、マーケティング活動を展開する手法だ。最終回では、エコシステム・マーケティングを実践する具体的なポイントと、それがもたらす企業やメディアの変化を取り上げる。

連載:エコシステム・マーケティングの威力

第1回:神頼みマーケティングからの脱却

第2回:マーケティング連合軍を形成せよ


エコシステム・マーケティング実践のポイント

 前回「マーケティング連合軍を形成せよ」でも述べたが、エコシステム・マーケティングでは、新たなパートナーシップが必要とされる。その実践においては、これまでのマーケティングの考え方から発想を転換することが求められる。

 エコシステム・マーケティングの実践におけるヒントは、次の6つのポイントに集約される。

  1. 互いを理解してパートナーシップ・モデルをつくる
  2. 自社自身の強みと弱み(開発機会)を見極める
  3. バランスのよいパートナーを選ぶ
  4. 消費者顧客との新たなコミュニケーション軸を構築する
  5. 消費者顧客の視点からメッセージを出す
  6. 相互のブランドを活用して潜在的なファンを増やす

 ごく一部となるが、1.について紹介しよう。

 企業にとってパートナーシップは重要だが、組み方が難しい。同床異夢は世の常だが、パートナーがそれぞれ異なる方向に走ってしまうようでは、良い結果は得られない。必要なのは、パートナーと共通の目標を設定することだ。そしてGRP(Gross Rating Point:延べ視聴率)をはじめとする従来の広告指標のほかに、トラフィック数や会員数、販売数量がどれだけ伸ばせるか、ブランドをどれだけ強化できるかといった指標を、企業の課題に合わせて検討する必要がある。

 まずは、インターネットの活用を前提にしたパートナーシップの形態を考えてみよう。具体的には、(1)広告出稿、(2)相互リンク、(3)共同ページ、(4)会員連携、(5)マーケティング課題の共有――の5つがある。エコシステム・マーケティングを実践する各段階で、企業の連係の仕方や共有すべき目標は異なってくる。

 最も単純なのが広告出稿だ。広告枠を金で買うという仕組みのため、企業とメディアはドライな関係を保つ。従来型のマーケティングの大半がこれにあたる。多くの場合、企業が組む相手は既知のメディアであり、相手のことを深く知らなくても簡単に広告を出稿できるので、広告会社にマーケティングを任せきりにするといったケースも少なくない。

 次の相互リンクでは、2社がお互いのWebサイトにバナーを張るという共同作業になる。Webサイトの訪問客をパートナーのWebサイトに誘導する面もあるため、単なる広告とは性質が異なる。2社の関係は限定的で浅い。例えばバナーを張る場合も、バナーを掲載しているWebページのコンテンツはメディアを運営する企業の判断に委ねられている。互いに議論をしてコンテンツを決めることはなく、単純なギブ・アンド・テイクの関係にとどまってしまう。

 共同ページは、Webサイトのページを共同で所有し、ユーザーを共有する。互いに意見を出し合うなど、文字通り密接な共同作業が求められる段階だ。

 会員連携は、2社の会員を相互に分かち合うものだ。初回で紹介した日本コカ・コーラと日産自動車の事例が該当する。2社で展開する「ハッピースフルキャンペーン」に参加するには、お互いが運営するWebサイトの会員になることが必要だった。いわば銀行口座を2人で共有するようなもので、相互理解や信頼関係を築いておかないと、実現は難しい。

 最も深いパートナーシップの段階では、マーケティング上の課題までもお互いの企業が共有する。互いのビジネスモデルを理解し、認知度の改善や会員増といった解決策に結び付けていく。当然売り上げや利益といった企業の業績とも関連するものであり、2社がそれぞれの目標を持ちながら、同じベクトルで全略を尽くすように持って行くのが鍵だ。

 2社が連携して新たなモデルを生み出し、力を合わせて取り組む。こうした関係を作ることで、妥協せずにマーケティングの大きな方向性を見いだす。エコシステム・マーケティングの肝要である。

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