クラウドサービス 進化の予兆Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年01月05日 09時25分 公開
[松岡功ITmedia]
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ハードも丸ごとクラウドサービス

 もう1つ、クラウドサービスの進化の予兆を感じたのは、富士通が2009年12月28日に発表したオフィスにおけるハードウェアからソフトウェアまでのIT環境をワンストップで支援する新サービスの登場である。

 「ワークプレイス-LCMサービス」と呼ぶ新サービスは、同社のデータセンターのクラウド基盤を活用し、PC、プリンタ、複写機、オフィスに設置された部門サーバなどのIT機器のライフサイクルをトータルに支援するものだ。

 企業内において多様化・マルチベンダー化するIT機器の調達、導入、日常運用や最新環境への移行といったさまざまな作業を、すべて月額料金で提供するアウトソーシングサービスである。

 従来、PCのみを対象としていたサービスから、プリンタ、複合機、サーバなどIT機器全般に対象を広げ、さらにモバイルアクセスやセキュリティ対策など、エンドユーザーに求められる幅広い業務に対応できるようにしたという。新サービスで注目されるのは、初期導入コストを抑えてシンクライアントを提供する「仮想デスクトップサービス(DaaS:Desktop as a Service)」がメニューに追加された点だ。同社のクラウド基盤上にクライアント仮想化管理システムを標準で実装し、DaaSとして提供することで、ソフトウェアの初期導入コスト軽減および導入期間の大幅な短縮を可能にしている。

 つまりは、クラウドサービスの仕組みにハードウェアの利用も丸ごと組み入れた格好だ。こうした丸ごとサービスには今後、クラウド基盤を持つ大手ITベンダーもこぞって参入してくるだろう。富士通が今後3年間で導入企業400社、2000億円規模の売り上げを見込んでいるように、大手ITベンダーにとってはこのサービスがクラウドの主戦場になるとみられる。

 これによって、情報システムの「所有」から「利用」への移行は一層弾みがつくだろう。丸ごとサービスの登場は想定できた動きだが、その普及テンポはクラウドサービスの進化にも大きな影響を与えそうだ。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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