オラクルは「サン」を生かせるかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年07月05日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]
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オラクルが目指す垂直統合ビジネス

 ただ、気になったのは320億円という数字だ。旧サンでいえば、年間売上高に相当するはずだ。日本オラクルは決算説明会で旧サンの直近の年間売上高を明らかにしなかったが、事情通によると「600億円規模はあった」という。そうだとすると、半分近くまで落ち込むことになる。

 だが、野坂専務の説明によると、計算はもう少し複雑なようだ。というのは、前述したように旧サンのパートナー企業との契約はOISが引き継いでいるからだ。野坂専務によると、「新年度のハードウェア製品の売上高については、旧サンのパートナー企業との契約のおよそ半分は今秋をめどに日本オラクルに移行するが、残りの半分はOISが継続した形になるとみている」という。

 旧サンのハードウェア製品の売上高は、パートナー企業経由が9割以上を占める。したがって、前述した日本オラクルの新年度のハードウェア製品の売上高145億円は、同売上高全体の半分で、OISが同額規模の売上高を上げる計算となる。とすると、旧サン関連の全売上高は単純計算で320億円と145億円を合わせた数字になる。それでも600億円規模からするとだいぶ目減りするが、それがこれまで曲折を経てきた旧サン関連事業の現実なのかもしれない。

 さて、そうした厳しい状態が続いてきた旧サンの関連事業を、日本オラクルがどう建て直し、生かしていくのか。冒頭で紹介した遠藤社長の発言の説明に戻ろう。

 「新生の日本オラクルは、引き続きオープンであることが大前提。ソフトもハードもオープンな製品を効果的に統合し、さまざまなニーズに合わせて最適化されたソリューションを提供してお客様により高い価値をお届けするのが、当社のめざす垂直統合ビジネスだ。サンとの統合でそうしたビジネスを一層広げられるようになった。今後はさらにさまざまなシナジー効果が生まれてくると確信している」

 最後に、エールの思いを込めて、1992年に発刊した共著書『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社)のあとがきに記した一文を紹介しておきたい。

 『これから21世紀のコンピュータ産業を見渡した時、サンがこれまでのように成長する保証は何もない。サンと同じ土俵に上がった巨大メーカーの攻勢に敗れ、消えてなくなるかもしれない。だが、サンが育てたオープンシステムだけは、消えてなくなることはない。ユーザーは以前のようにコンピュータメーカーの言いなりになることなく、自由自在にメーカー、機種を選択してコンピュータの便利さを享受できるようになるだろう。以前のようなハードウェアメーカーに縛られるといった状況には、決して後戻りはしないはずである。そして、仮にサンという会社は消えたとしても、サンという名前だけはコンピュータ史上に燦然(さんぜん)と輝くはずである』

 オラクルにはぜひ「サン」を生かしてもらいたい。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。




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