EMCによるGreenplumの買収はDWH業界再編の引き金になるか?

EMCのGreenplum買収はOracleによるSun買収と同様、ワンストップ型統合アプライアンスの提供を狙いとしている。この取引はDWH業界における企業買収を活発化させる“引き金”になるかもしれない。

» 2010年07月08日 15時30分 公開
[Brian Prince,eWEEK]
eWEEK

 ストレージ大手の米EMCがデータウェアハウジング(DWH)企業の米Greenplumを買収すると発表したが、アナリストらによると、これを機にDWH分野で企業買収が活発化する可能性があるという。

 EMCでは、情報インフラ事業部内にデータコンピューティング製品部門を新設する計画であり、今回の買収はその基盤を整えるのが目的だとしている。Greenplumのデータベースは、汎用型ハードウェア上でのビジネスインテリジェンス(BI)や解析処理に適した「シェアードナッシングMPP(超並列処理)」アーキテクチャを採用し、同社は企業ユーザーがクラウドにデータを保存するのを支援する取り組みを進めてきた。

 米Forrester Researchのアナリスト、ジェームズ・コビーラス氏によると、この買収は、DWH分野で新たな業界再編が始まったことを示すものだという。

 「米Oracleによる米Sun Microsystems買収の狙いの1つに、ワンストップ型の統合DWHアプライアンス(SunのハードウェアとOracle Exadataの組み合わせ)を提供することがあるが、EMCはこれと同じことを逆の方向から狙っている。すなわち、DWHソフトウェアベンダーを買収することで自社のハードウェアに付加価値を与えるということだ。将来的には、Greenplumが持っているほかのソフトウェア技術を利用する狙いもあるかもしれない」とコビーラス氏は指摘する。「この買収により、EMCは自社の製品群で構成されるほぼ完全なハードウェア・ソフトウェアスタックを提供できる数少ないDWHアプライアンスメーカーの1社になる」

 「ここで“ほぼ完全な”というのは、ハードウェア(EMCはストレージ技術を持っているが、サーバとインターコネクトに関しては今後もサードパーティーに依存する)、データベース(GreenplumはオープンソースのBizGreSQLを拡張・カスタマイズした)、クエリのプランニングと最適化、データローディング、ワークロード管理(Greenplumはこれら3つの分野で独自技術を開発した)のことを指している」(同氏)

 「その意味で、EMCは総合的なハードウェア・ソフトウェアスタックで構成されるワンストップ型DWHアプライアンスのベンダーの1社になる。こういったベンダーとしては、米IBM、Oracle/Sun、米Hewlett-Packard(HP)などが存在する」と同氏は付け加える。

 米Monash Researchの経営者カート・モナッシュ氏によると、EMCとGreenplumの取引がDWH業界における企業買収を活発化させる“引き金”になるというのは大げさかもしれないが、業界再編は不可避だという。

 「この分野で生き残りを狙っているのは、Oracle、Microsoft、IBM、Sybase、Teradata、Netezza、Greenplum、Vertica Systems、Aster Dataなどだ」とモナッシュ氏は米eWEEKの取材で述べている。「しかしこれだけ多くのベンダーが独立企業として残るのは無理だ。このうちの何社かは同業者に買収されるだろう。HPはいずれ、どこかの企業を買収する必要がある。DellやCisco Systemsなども、ライバル企業の製品の成功を目の当たりにすれば、買収を検討せざるを得なくなるだろう」

 EMCによると、今回の買収は「Big Data」分析へとシフトしつつある業界の流れに対応するものだという。GreenplumのMPP技術、スケールアウトアーキテクチャ、セルフサービス型コンサンプションモデルとEMCの仮想プライベートクラウドインフラを結合することにより、Big Dataをめぐる将来の課題に対するソリューションを提供するとしている。

 Greenplumの相談役を務めるスコット・マクニーリー氏は「エンタープライズ分野に強みを持つEMCと、DWHおよびビジネス分析の分野で変革を進めるGreenplumはパーフェクトな組み合わせだ」と発表文で述べている。「両社はクラウドコンピューティング、仮想化およびソーシャルコラボレーションのパワーを見事に結合することにより、顧客がコンピューティングとビジネス分析の新たな段階に進むのを後押ししようとしている」

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