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» 2010年07月12日 08時30分 公開

クラウド時代のビジネスモデルの行方Weekly Memo(2/2 ページ)

[松岡功,ITmedia]
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水平分業モデルを志向するソフトウェアベンダー

 一方、マイクロソフトやシマンテックといったソフトウェアベンダーは、そうした垂直統合のビジネスモデルに異を唱えている。

 「当社の事業展開における最大の強みは、パートナー企業とのエコシステムにある。これはクラウド事業でも同じだ。ハードウェアとソフトウェアを保有するベンダーは、自社ですべてのサービスを提供しようとしているが、当社のソフトウェアは数多くのハードウェアに搭載されており、お客様に幅広い選択の自由を提供している」

会見に臨むマイクロソフトの樋口泰行社長 会見に臨むマイクロソフトの樋口泰行社長

 マイクロソフトの樋口泰行社長は、同社が7月6日に開いた経営方針説明会でこう語り、「特にクラウド事業においては、お客様やパートナー企業との信頼関係が大事だ」と強調した。

 その理由について樋口社長は、「クラウド事業ではお客様の大事なデータやアプリケーションを預からせていただくからだ。したがって、お客様にはこの会社に預けても大丈夫だと信頼してもらえないと、クラウド事業は成り立たない。その点、日本のソリューションパートナーはお客様から厚い信頼を得ているので、一層緊密な連携を図っていきたい」と説明した。

 とはいえ、マイクロソフトの場合はソフトウェアのほぼ全分野をカバーしており、製品・サービスのラインアップという意味では垂直統合モデルを志向しているともいえる。

 パートナー企業とのエコシステム作りに注力するのはマイクロソフトと同じだが、顧客ニーズは垂直統合モデルばかりではない、と語るのはシマンテックの河村浩明社長だ。同社が7月8日に開いた事業戦略説明会で河村社長は「当社は垂直統合でなく、パートナー企業とのエコシステムによる水平分業でクラウド事業に取り組んでいく」とし、顧客ニーズについてこんなエピソードを披露した。

 「先日、大手企業のCIO(最高情報責任者)の方から、大手ITベンダーの多くが垂直統合モデルを志向するようになると、こちらは選択の自由が奪われてしまうので困る、との話を聞いた。自由な選択のニーズに応えるビジネスモデルも求められていると強く感じた」

 セキュリティやストレージ管理など特定の分野で競争力のあるソフトウェアを提供しているシマンテックにとって、水平分業のビジネスモデルを選択するのは当然のことだろう。ただ、注目したいのは、クラウドに対する顧客ニーズが垂直統合モデルばかりではなく、水平分業モデルにもあるということだ。そのニーズに、独立系のシステムインテグレーターやサービスプロバイダーがどこまで応えていけるか、が今後の大きなポイントになる。

 クラウド時代のビジネスモデルにおける大手ITベンダー各社トップの発言を紹介してきたが、7月10日、富士通とマイクロソフトがクラウド事業をグローバルで連携して進めるという新聞報道があった。両社は今週にも正式発表するようだが、報道によると、マイクロソフトのPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)「Windows Azure」を富士通のデータセンターでも利用できるようにするという。

 これはつまり、Windows Azureを利用する顧客のデータを、富士通のデータセンターにも置けるようにするということだろう。もしそうなれば、両社ばかりでなくIT業界全体のクラウドビジネスのあり方に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。富士通はWindows Azureを自社のPaaSの中核に据えるのか、マイクロソフトは富士通以外にも同様の展開を図っていくのか、注目したい。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。




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