クラウド推進団体が提案したSaaS間連携の新発想Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年07月20日 12時50分 公開
[松岡功,ITmedia]
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フロントエンドでのSaaS間連携を提案

 では、ユーザーニーズとどう異なっているのか。

 「ユーザーからすると、SaaSについては自分たちが使いたいサービスを自由に組み合わせて利用したい。となると、単一のPaaS上でそれを実現することは難しく、ユーザーも単一のPaaSに自社のアプリケーションをすべて委ねることは望んでいない」

 こう語る戌亥氏はさらに、「一方でオンプレミス(自社運用)システムもしばらくは残るだろう。そう考えると、いま最も急がなければならないのは、異なるSaaSやオンプレミスシステムの間を、業務処理という観点からいかにシームレスに連携を図っていくかだ」と指摘した。

 だが、そこでまた新たな問題が浮かび上がる。誕生の背景や対応業務が異なるSaaS同士を連携させるために、バックエンドまで踏み込んだデータ連携を進めると、膨大なコストと時間を費やしてしまいかねない。それではスピーディーなビジネス展開を図れるというSaaS本来のメリットが生かせなくなる。

 そこで、戌亥氏らが「開発言語、データ構造、稼働するプラットフォームが異なるSaaS間をスピーディーに連携させる良い手法はないか」と検討した結果、着目したのがオープンソースソフトウェアの「OpenSocial Gadget」を利用したフロントエンドでの連携である。

 OpenSocial GadgetはもともとGoogleが開発したSNS向けAPIで、軽量ながら多言語に対応し簡単に開発・利用できるのが特長だという。すでに世界の有力SNSの多くに採用されており、現在OpenSocial.orgで標準化が進められている。

 CBAでは現在、このOpenSocial Gadgetを使って異なるSaaS間のフロント連携の実証実験を進めており、会見でも幾つかの適用事例を披露してみせた。

 とはいえ、あくまでフロント連携なので、バックエンドとつながったデータ連携ができるわけではない。ただ、スピーディーなビジネス展開を図れるというSaaS本来のメリットを生かせるようになる。ユーザーの利便性を考えると、フロント連携は新たな発想といえる。

 では、なぜCBAはSaaS間フロント連携の提案に力を入れるのか。その答えは会見で語られた、ネットワンシステムズがCBAの旗振り役を担う理由の中にあった。

 ネットワンシステムズの荒井透取締役によると、今後はユーザー企業でもベンダーでも、大規模の企業はプライベートクラウドへの指向が強まるが、中小規模の企業はパブリッククラウドの利用が主になり、中でもSaaS化にどううまく取り組むかが大きなポイントになるという。

 そして、「ネットワンとしてはプライベートクラウド向けのビジネスを中心に展開しているが、今後のクラウドサービス間でのアプリケーションやデータ連携の必要性を考えると、さまざまなユーザーニーズを取り込んだソリューションが求められる。その点、CBAでは会員同士でさまざまなアイデアを出し合い、ビジネスの拡大も大いに期待できる。こうした活動はネットワンにとっても非常に有意義だ」と語った。

 特に中小規模のユーザーにとってSaaS間フロント連携は効果的というCBAの提案は、SaaS本来のメリットからみて的を射ている。こうした発想をどう生かすか。CBAの活動とともに、クラウド市場の動きに注目したい。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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