コンテナ型データセンターは普及するかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年08月09日 07時50分 公開
[松岡功,ITmedia]
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クラウドサービスにおける競争力の源泉に

 次世代のICT基盤として期待が高まるコンテナ型データセンターだが、日本での普及に際しては幾つかのハードルがあるようだ。増月氏によると、まずクリアしなければならないのが法規制の問題だという。

 日本では現状、コンテナ型データセンターは建築基準法の対象になってしまう。また、消防法に準拠した設備が必要になることから、構築・運用コストが上昇する可能性がある。しかも消防法については、設置したところの地方自治体に許認可を得るため、それぞれの要求に合わせた対応が必要になるという。

 とはいえ、建築基準法への対処については、建築物の内部に設置すれば対象外となるため、実際には巨大な倉庫などに設置するケースが多くなりそうだ。また、日本SGIの製品は注文生産方式を採っているので、建築基準法とともに消防法に対しても柔軟に対処できるとしている。

 さらに、増月氏が「コンテナ型データセンター普及の大きな弾みになるかもしれない」と期待を寄せているのが、4月に総務省が発表した法規制を適用除外する「データセンター特区」の創設である。同省がクラウドの普及を見据えて国内に次世代データセンターを構築する必要があると判断したもので、冷却に必要なエネルギーを節約できる北海道あるいは東北地方を候補地に、国内外の事業者を誘致する計画だ。

 だが、増月氏によると、日本におけるコンテナ型データセンター普及の最大のハードルになっているのは、法規制の問題もさることながら、自社におけるTCO削減効果を把握したいという顧客の要望に答えきれないことだという。これは取りも直さず、日本での導入事例が蓄積されていないことによるものだ。

 これに対し、日本SGIでは米SGIによる米国での導入事例などを基に試算しているが、やはり説得力が増す日本での導入事例の蓄積が急がれるところだ。

 冒頭で日本での普及はこれからと述べたが、導入事例が蓄積されていないことから、日本企業はコンテナ型データセンターに対して、本当に数あるメリットを享受できるのか、と見る向きが少なくない。それを検証するのは当然だが、次のような視点もぜひ持ちたいものだ。

 「これからクラウドサービスは激しい競争が繰り広げられる。その中で優位に立つためにはICT基盤のコスト構造を見直すべきだ。コンテナ型データセンターはその選択肢の1つだが、クラウドサービスにおける競争力の源泉になりうると確信している」(増月氏)

 そう考えていくと、クラウドサービスとコンテナ型データセンターは近い将来、一体化したソリューションとして提供されるようになるかもしれない。そこにまた新たなビジネスが生まれるような気がする。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。




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