クライアント仮想化で目指すべきは“ユーザー体験”を変えること――HPのティファニー氏

ITベンダー各社が企業顧客への訴求を強める「クライアント環境の仮想化」。クライアント仮想化は企業にどのような変化をもたらすのだろうか。

» 2010年10月21日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
HP Desktop Solutions Organization ISV Alliances and Field Enablement Teamマネジャー アレン・ティファニー氏

 物理的なPCのデスクトップ環境をデータセンター内のサーバにホストした仮想マシンに置き換える「デスクトップ仮想化」が企業ITの1つのトレンドになっている。デスクトップ仮想化の動向をクライアント側から見た場合、企業にはどのようなインパクトがあるのだろうか。米Hewlett Packard(HP)でクライアント仮想化戦略とパートナーアライアンスを担当するアレン・ティファニー氏に話を聞いた。

 「この1年にVMware、Citrix Systems、Microsoftがデスクトップ仮想化の新製品を次々と投入したことで、企業や団体からの注目が急速に高まった。大規模導入を前提にした試験導入を始めたところも多い」と、ティファニー氏は最近の動向をこのように紹介する。

 同氏によれば、米国ではこの半年ほどの間に教育や医療、保健業界での本格導入が始まり、その他の業種でも大企業を中心にトライアルが始まった。日本では金融や製造で数百から数千ユーザー規模の導入事例が出始めたという状況だ。デスクトップ仮想化の導入理由は、米国では「リモートアクセスの実現」と「コスト削減」が目立つ一方、日本は「セキュリティの強化」が目立っている。

 デスクトップ仮想化によって、デスクトップ上の実データはデータセンター内に集約される。ユーザーはデータセンターにアクセスしてデータを利用することになる。この際に利用するクライアントデバイスは、シンクライアントという位置付けであり、クライアントデバイスの種類がPCであったり、スマートフォンであったりという区別は基本的にない。このような概念が「クライアントの仮想化」だ。シンクライアントになったクライアントデバイスには、実データが残らないため、クライアントからのデータ漏えいのリスクが軽減し、セキュリティレベルが高まる。

 「米国でもセキュリティ強化は大きな理由だが、どのような場所にいても必要なデータにさまざまなクライアントデバイスからアクセスできるようにすることで、ユーザーの利便性を高める点が注目されている」(ティファニー氏)。管理する側から見ても、クライアントごとにデスクトップ環境を提供する手間や実データの分散化を回避できるため、結果的にコストを削減できる。

 「クライアントの仮想化」について、米国では離れた場所からでも必要なデータにアクセスできる手段と見る向きがあり、日本国内では重要なデータをオフィス内にある多数のPCからデータセンターに一元化する手段と見る向きあるようだ。

 ティファニー氏は、こうした日本と米国での意識の違いについて、「どちらか一方が良いということではなく、それぞれにおいてユーザー体験を高めていくようにすることが重要だろう」と指摘する。

 リモートアクセスの手段として活用すれば、ユーザーは場所やデバイスの種類を左右されることなく作業ができるため、生産性の向上につながる。仕事をする環境に多様性を持たせる「ワークスタイルの変革」を実現する。

 オフィス内に限っても、例えば端末をPCからシンクライアントに置き換えることで、「仕事に集中できる環境を実現する」(ティファニー氏)という。シンクライアント端末は、基本的にサーバ上のデスクトップ画面を表示するだけであり、PCのような性能を必要としない。ファンレス仕様であればオフィス内が静かになり、小さな筐体であれば、机上を広く使えるという具合だ。

 このように、「クライアントの仮想化」はユーザーがコンピュータを利用する環境をさまざまな形に変えるものとなる。ティファニー氏は、企業での「クライアントの仮想化」を実現していく上で、HPが持つ広範な製品ポートフォリオやパートナーとの関係が強みになると強調する。

 「クラウドコンピューティングも含めると、企業のIT環境は今後大きく変化する。サーバやストレージからクライアントまでを包括的にカバーしていることで、顧客企業が目指す環境作りを支援していけるだろう」(ティファニー氏)

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