インメモリ技術を組み込んだアプリケーションの開発も加速している。開発を統括するジム・ハガマン・スナーベ共同CEOが前日の基調講演で話したとおり、SAPはSAP Business SuiteからSAP Business ByDesignに至るまで、すべての製品にインメモリ技術を組み込んでいくとしている。
このカンファレンスで節目となるリリース10が発表されたEPM(Enterprise Performance Management)製品、SAP BusinessObjects EPM Solutionsもそのひとつ。従来の業績管理製品のように財務部門での活用にとどまらず、現場のマネジャーらがリスクを把握したうえで、全社の業績最大化につながる意思決定を迅速に行えるようにするのが狙いだ。インメモリ技術が組み込まれ、ビジネス環境の変化を素早くつかみ、それに応じた最善の手を打てるという。
ビデオでは独シュトゥットガルトに本社を置くDaimlerが事例として紹介された。同社では世界各国各地域の膨大な情報を吸い上げ、秒単位で業績管理に役立てているという。
導入のしやすさではクラウドの右に出るものはない。シッカ氏は、「SAP HANA AppCloud」と呼ばれる分析クラウドサービスが提供に向けて準備されていることも明らかにした。ステージでは、医薬品の臨床開発プロセスを支援するSaaSベンダー、Medidata Solutionsが紹介された。ニューヨーク市に本社を置く同社は、HANAのクラウドサービスを活用して分析機能の強化を準備中だ。
Medidata Solutionsがテストしているのは、Business Intelligence OnDemandだが、ほかにもSAP Carbon Impact、Sales and Operations Planning、SAP Smart Meter Analyticsがプレビュー段階にあるという。
SAPPHIREの大トリを務めるのはハッソー・プラットナー氏をおいてほかにいない。カメラクルーがカンファレンス会場で拾った参加者の質問に答える形で、彼のアイデアが結実したHANAを熱心に売り込んだ。
この日SAPは、コアのSAP ERPとインメモリのHANAを迅速に配備し、販売、財務、出荷、調達に関する15以上の業務レポートをリアルタイムで作成するソリューションを発表している。
「さらにインタラクティブな分析もHANAが本領を発揮できるところだ。分析結果から次の仮説が浮かび、もっと分析したくなる。それを瞬時に行えるようにするのがHANAだ」とプラットナー氏は話す。
ステージでは、難しいとされている「納期回答」(ATP:Available-to-Promise)も、HANAを活用することで、顧客の視点できめ細かに行えるデモも行われた。デモされたiPadのセールスアプリケーションは、グラフィカルで使いやすくなっているものの取り立てて特別には見えないが、真価は納期回答のきめ細かさにあった。注文時にその場で、どの製品がいつ納品できるのか、生産情報や在庫情報を正確に顧客に伝えることができ、企業に大きな競争力をもたらすことができる。
また、テキストや非構造化データの分析もHANAは得意とする。ミネソタ州ミネアポリスに本社を置く医療機器メーカー、Medtronicは、医療機器の修理やメンテナンスに関する報告書をHANAでテキスト分析し、傾向を把握、特定の部品に問題の予兆があれば即座にサプライヤーと解決に当たれるようにするという。
「HANAは既存のアプリケーションに手を付ける必要がなく分析をリアルタイム化してくれるだけでなく、新たな機能をローコストで実現してくれる」とプラットナー氏は話す。
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