バッチ処理を“瞬速”にする半導体メモリアレイを発売 日本HP

5〜80テラバイトの記録容量を備え、毎秒1万5000回転のHDDに比べて約50倍の応答速度を実現したという「HP VMA」シリーズを発売する。

» 2011年12月13日 14時11分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は12月13日、半導体メモリアレイの新製品「HP VMA」シリーズを発売した。データベースでのバッチ処理時間を大幅に高速化させたのが特徴で、他社製データベースアプライアンスの対抗製品に位置付けている。

HP VMA3210 10TB SLC メモリアレイ

 新製品は3Uサイズの筐体の最大84枚のNANDの半導体メモリモジュールを搭載でき、8筐体までを同時利用できる。記録容量は約5〜約80テラバイト(1筐体当たり最大10テラバイト)。同社の8ソケットx86サーバ「HP ProLiant DL980 G7」と専用のPCIeパススルーカードで直接接続した場合、応答時間を毎秒1万5000回転のHDDに比べて約50倍に高速化でき、SAN接続の場合でも同25倍に高速化できるという。

 処理時間の短縮と半導体メモリの長寿命化を考慮して、半導体メモリへのデータの書き込み処理は、「Single Level Cell」や「Wear Leveling」を採用した。同社では半導体メモリを5年程度、使用できるとしている。4+1のRAID構成やホットスペアにも対応する。

 想定される利用シーンは、高速のバッチ処理が要求される業界(特に金融や流通など)およびハイパフォーマンスコンピューティング分野での大量データの一括計算だという。

VMAとSSD、HDDによる応答時間の違い

 製品価格は記録容量5テラバイトの「HP VMA3205 5TB SLC メモリアレイ」が2099万1600円から、同10テラバイトの「HP VMA3210 10TB SLC メモリアレイ」が4058万3550円から、「HP VMA PCIe パススルーカード」が17万4300円、「HP VMA SANゲートウェイ」が209万8950円からとなる。

 製品を発表したエンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部長の上原宏氏は、「大量データのリアルタイム処理が要求されつつあるが、現実にはバッチ処理が必要な部分が多い。新製品はボトルネットとなるサーバとストレージのI/Oを大幅に改善できる手段になるだろう」と述べた。

 こうしたニーズに対して、ITベンダー他社ではデータベース専用アプライアンスを展開。上原氏は競合製品に日本オラクルのExadataや日本IBMのNetezzaを挙げ、「専用機では“ベンダーロックイン”(囲い込み)に遭うため、ITの柔軟性が損なわれてしまう。HP VMAはその点で“疎結合”のシステムを組める」と特徴を説明する。

サーバ+ストレージによるビッグデータ処理ソリューションとしては、ExadataやNetezzaを競合製品に位置付ける

 米HPが金融サービスの顧客企業とベンチマークを実施したところ、ETL処理ではExadataに比べて30%ほど処理時間が短く、クエリの実行では約4分の1短い結果になったという。製品戦略室長の山中伸吾氏は、「ハードウェアだけで高速できるシンプルさを企業顧客に訴求したい。価格面でも他社よりもコストメリットを打ち出す」とし、競合製品の導入も検討する企業を対象に期間限定で、DL980 G7とVMA3205をセット購入した場合に製品価格を半額にするキャンペーンを実施する。

 上原氏によれば、今後は月間5システム以上の販売を計画しているという。

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