個人の電子的情報をどう安全にビジネス活用すべきか――IPA報告書

技術の進歩で個人に属する情報を使ったビジネスの広がりが期待されるものの、プライバシー侵害などの危険性もある。

» 2012年08月23日 20時11分 公開
[ITmedia]

 ビッグデータ分析など、個人に属する電子的な情報(パーソナル情報)をビジネスに活用する動きが広まる中、一方では情報の悪用などによるプライバシー侵害を懸念する声も高まりつつある。パーソナル情報を保護しつつ、どう安全にビジネス活用するか――情報処理推進機構(IPA)が現状や課題などを取りまとめた。

 IPAが8月23日に公開した報告書「パーソナル情報保護とIT技術の調査」ではパーソナル情報の活用事例やIT関連技術、法制度、市場を調査し、健全なパーソナル情報の活用市場を実現していく上での課題を明らかにしている。

 まずパーソナル情報を活用したビジネスの状況は、国内では個人情報保護法との関係によってパーソナル情報を本来の収集目的以外で活用する二次利用によるビジネスが限定される傾向にあった。米国では二次利用の条件として特定情報を削除することなどを法律で求めており、パーソナル情報が広く活用されているという。このことから、パーソナル情報の二次利用によるビジネスを活発化させるには、一定条件を前提とした制度の構築が必要だとしている。

 技術動向をみると、氏名や住所など個人を特定するためのデータに加え、インターネットやSNS、位置情報、画像情報などの周辺情報からも個人やプロファイルを特定できる状況になり、個人への攻撃に利用される可能性もあると指摘。匿名化技術を実用化しているケースはほとんど無いという。プライバシー侵害の懸念を解消するには、パーソナル情報から個人を識別できないようにする技術が十分であることを、客観的に保証する仕組みが求められるとした。

 個人がパーソナル情報の流通をコントロールすることについては、法制度面で統一された定義が存在せず、技術的対策だけでも完全な形としては実現できないとした。なお、個人情報保護法では個人の権利(訂正や削除、停止など)を明確に規定していないが、事業者の義務(収集や利用の制限、保有条件)によって実質的には規定があるとみなされるという。欧米では法制度の面から事業者だけでなく個人の権利を強化する方向にあるとしている。

 パーソナル情報を活用した市場規模は、2011年度の推計では約1兆7048億円(参考値)に上ると試算。だが二次利用による市場は1割強であり、本人へ提供するサービスへの活用といったビジネスに比べて未成熟な状況だという。

 報告書ではパーソナル情報を活用するビジネス市場の発展に必要なエコシステムも示している。

パーソナル情報市場の発展に向けた市場、技術、制度の整理(出典:IPA)

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