高知県知事、MIJS会員各社に「地産外商につながる情報技術を」とエール

国内ソフトウェアベンダーが集う団体「MIJS」がワークショップを実施。開催地となった高知県の尾崎知事は県外にビジネス機会を広げるには情報技術が不可欠と期待を寄せた。

» 2012年10月12日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]

 メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム(MIJS)は10月11日、「日本を支える真の地方力とは―ソフトウェア産業の発展が地方を元気にする―」と題しワークショップを行った。今回は高知県で実施した。

 ゲストとして講演を務めたのは尾崎正直高知県知事。2006年の設立以降、毎年1回は地方でワークショップを行ってきたMIJSだが、県知事が参加するのは初めてのことだという。登壇した尾崎知事は冒頭、「地方産業は構造的な問題を抱えている」と指摘する。「一般論としては、景況は循環するものだ。だが地方経済は“縮み”から逃れられない」

 2005年以降、国内人口は自然減の段階に入った。だが高知県では先んずること15年、1990年から人口の減少が続いているという。「生産人口の減少はさらにハイペース」というのが知事の指摘で、高知県に限っていえば毎年就業人口が5000人減り続けるペースだという。結果として購買力も下がる。1997年には高知県で2兆円の消費があったが、2007年には1.6兆円にまで減少している。「高知だけの問題ではない。今後より多くの地方が、同様の問題を抱えるはずだ」

 このような構造的“縮み”という課題に対し高知県はどのように取り組むのだろうか。その1つが「地産外商」である。

 一般に「地産地消」(地域の産物をその地域で消費すること)はよく言われる考え方だ。対して知事の言う地産外商とは、縮小傾向にある県内市場のみを頼るのではなく、高知県の産物を県外、そして海外にまで目を向けて流通させる考え方である。方向としては地消を徹底しつつ外商を強力に推進する、ということになる。

 そこにはクリアすべきハードルもある。直接には物流コスト。また都会に通用する付加価値をどのように育てるか。「高知県は素晴らしい産物に恵まれているが、安定的な事業として継続できるかどうかは別だ」と尾崎知事は話す。「生産、加工、流通、販売という事業のインフラをサポートするものとして、ITには大きな期待を寄せている」

 既に成果もある。例えば「こうち新施設園芸システム」の開発により、従来は各農家の経験に頼っていたかん水制御を自動化し、高級メロンや高糖度トマトの品質を安定化できた。また「高知まるごとネット」から地場オンラインショップへの誘導も増加しており、2009年には月間約2000件だった取引が、2011年には4倍の約8000件に急伸したという。

 「(地産外商を推進する上で)地方には人材が足りない。また大都市圏とのつながりも薄く、流通網を築くのが困難だ。だがこういった問題は情報通信技術が解決できる。国内ソフトウェアベンダーの取り組みに期待する」と会場に集うMIJS会員各社に期待を寄せた。

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