「ダントツ」「独自」の技術開発を、NECが研究成果を披露

NECが研究開発の最新成果を公開。中央研究所長の江村克己氏が研究開発への取り組みを説明した。

» 2012年12月05日 19時25分 公開
[ITmedia]
NEC中央研究所の江村克己所長

 NECは12月5日、同社の研究開発における取り組みを報道機関向けに公開した。研究方針について執行役員兼中央研究所所長の江村克己氏は、「将来の事業化、あるいは現業を拡大させる革新を、当社独自の技術、当社がダントツの技術で実現していく」と説明した。

 同社の研究開発拠点は世界に4カ所にあり、人員は全体で1250人。中央研究所の研究予算はNEC全体の研究開発費の10%強を占めるという。同社の事業を推進する技術開発を担うが、江村氏は「近年は顧客とともに新たな価値を生み出すこと、当社のグローバル事業に貢献することに注力している」と話す。予算配分は事業直結型の研究と新規事業創出を目指した研究がそれぞれ半分ずつという。

 また、今年4月には「C&Cイノベーション推進本部」を新設し、研究部門も大きくクラウド分野とスマートエネルギー分野に再編。遠藤博信社長ほかマーケティング部門や事業部門の幹部を交えて、研究成果から新規事業化につなげるための議論を2カ月ごとに実施しているという。

 江村氏は、研究開発の強化領域として「ビッグデータ分析」「SDN(Software Defined Networking)」「実世界データの処理」「セキュリティ」「スマートエネルギー」「スマートビジネス」を挙げ、これらを組み合わせながら、現事業への活用と新規事業の創出に取り組んでいると説明する。SDN分野では2011年に世界初のOpenFlow対応ネットワーク機器を製品化。将来的に同社の認証技術などとSDNを組み合わせることで、例えば人事異動の際に社員の所属先を人事システムで変更すれば、異動先で使用するネットワーク環境をSDNで自動的に設定するといった高度な情報システムを実現できるという。

強化領域と事業における研究テーマ

2つの新たな研究成果

 中央研究所の最新の研究成果として、店舗などの大量の商材を識別するセンシング技術と、不鮮明な映像をリアルタイムに鮮明化するという処理技術が披露された。

 前者の技術は、カメラ映像から物品を認識する技術と微弱な電波の変動から物品の存在の有無を検知するセンサ技術を組み合わせたもの。例えば、商品棚の正面を撮影したカメラ映像からどのような商品がどこに陳列されているかを瞬時に識別しつつ、映像では分からない商品棚の奥の状況はセンサで検知する。これにより、ICタグやバーコードなどを商品ごとに貼り付けなくても効率的な在庫管理が可能になるという。また、カメラ映像で来店客の属性(性別や年代)を検知し、商品棚で手に取った商品について、そのまま購入したのか、棚に戻したのかといった行動から商品の販売動向を詳細に分析できるようになるという。

物体認識技術のデモ

 後者の技術は、夜間や遠望、悪天候などで不鮮明な映像をリアルタイムに鮮明化処理する。鮮明化処理の複雑なアルゴリズムを11月に発売したインテル Xeon Phiを採用する同社サーバの能力で可能にした。将来は広範囲な映像監視に用いることを想定しており、犯罪やテロ抑止といったパブリックセーフティを支えるソリューション技術として展開する計画だとしている。

左はVGAのアナログ高感度カメラで撮影した夜間の映像。鮮明化処理した右の映像ではちらつきがほとんど無く、色合いもはっきりして視認性が向上している

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