2013年新春インタビュー

データから何ができるか見えてくる――EMCジャパン・山野社長2013年新春特集 「負けない力」(2/2 ページ)

» 2013年01月04日 08時00分 公開
[聞き手:國谷武史,ITmedia]
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データからみえてくる

―― 2013年の国内のIT市場をどうみていますか。

山野 マクロ経済でみれば、株価が持ち直しているので2012年ほど悲観することはないかと思います。いろんな面で投資も活発化していくと思いますが、投資先は不動産や物では無く、日本企業のグローバル化やビジネスのイノベーションのための「情報」やITに向かうだろうと期待しています。

 先ほど述べたように、クラウド市場ではバックアップやVDIの導入などに伴うサービスプロバイダーの活発な投資が続くでしょう。利用形態にしてもプライベートクラウドやパブリッククラウドの需要がますます高まるはずです。

 また、ビッグデータという規模では無いにしても、情報の活用もより広がっていくでしょう。例えば、ECサイト事業者では顧客のプロファイルや購買履歴などのデータをもっと活用して顧客の関係を強化し、購買拡大につなげようという取り組みが広まっています。EC主体では無い企業でも、最近はクレジット機能やポイント機能が付いたカード会員を増やそうという活動が増えています。ここではポイントで顧客を囲い込むという程度の活用しかされてきませんでしたが、既に情報をどう活用していくかという方に向き始めていますね。

 その半面、セキュリティやプラバシーの問題も表面化し、企業には安全や信頼が以前にも増して要求されるでしょう。クラウドが登場した頃にもこうした懸念はありましたが、ビッグデータでも情報が盗まれたり悪用されたりしないか懸念する声が聞かれます。情報を保護することもしなければなりません。

 見方を変えると、実はセキュリティ対策もビッグデータ活用の1つの形です。従来のセキュリティ対策は静的なアプローチ、つまりは事前に作成した定義ファイルで良いか悪いかを決めてきました。現在のセキュリティ対策は巨大なデータの相関を分析することで動的に脅威へ対抗していきます。例えば、なりすましによるオンラインバンキングへの不正アクセスでも、膨大なデータを分析すれば正規ユーザーの行動パターンと攻撃者の行動パターンは一目瞭然なので、不正アクセスを未然に阻止できるわけです。

―― 社長自身もデータを集めるのが趣味だとお聞きしました。

山野社長.jpg 「データから何ができるだろうって試しているんですよ。生まれ持っての性格ですかね」と語る山野氏

山野 過去の人間ドックでの検診データを全て保存しているので、体重や血圧、中性脂肪の変化といった健康管理に役立てています。Excelで作ったシートにデータを入れるとすぐにグラフ化されるので、今の体が標準偏差の範囲内にあるかどうかもも一目で分かります。ここ数年は毎食での摂取カロリーと体重の変化も記録しているので、メニューを見ただけで「これは太るから止めておこう」ということも分かってきます。元々は、「データを集めれば何かできるかもしれないので試してみよう」と思ったのがきっかけでした。レコーディングダイエットはお勧めですよ(笑)。

 「世界のデータの0.5%しか活用されていない」という調査結果を昨年発表したのですが、データの価値はもっと活用されていいと思います。99.5%のデータは使われていないということでもありますが、そのうちの数%でも活用されるようになれば、世界全体の生産性だとか人間の生活だとかいったものが、より良いものに変化していくかもしれません。データが生み出す価値を信じたいですね。

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