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» 2013年06月25日 08時00分 公開

アジアで戦う「日の丸IT」――Hitachi Asiaに聞く

今やアジアは工場ではない。マーケットである。日立はその中期経営計画でアジア市場での売上比率増を狙う。東南アジアにおける同社のソフトウェアビジネスについて展開を聞いた。

[石森将文,ITmedia]

 日本企業のグローバル化が叫ばれて久しい。例えば国内製造業大手の日立製作所ではその海外売上比率について、2015年度には現在の41%から50%超に伸ばすことを、中期経営計画で掲げている。

 その内訳を見てみよう。売上全体に占める欧州と北米の比率は2012年度の16%に対し2015年度には18%と「やや増」といったところだが、中国およびアジア諸国については2012年度の25%に対し、2015年度までに32%まで伸ばす計画だ。

 日立によるこの計画は、今やアジアが安価な労働力の調達先であるオフショア拠点ではなく、日本企業の成長を左右するマーケットになりつつあることを端的に示すものと言えよう。

“挑戦者”としてのスタート

Hitachi AsiaのSystem Management Solution部門でマネジャーを務めるセバスチャン氏。「シンガポールはミックスカルチャーの国。日本企業であるHitachiで働くことに何の違和感もない」と話す

 東南アジア7カ国に拠点を構える「Hitachi Asia Ltd.(HAS)」はシンガポールに統括拠点 を置いている。その歴史は古く、1963年の事務所設立にまでさかのぼる。従業員数はおよそ400人程だが、その事業内容としてはIT分野に限らず電力・産業機器の販売やデジタルメディア事業なども手掛けており、いわば「ミニ日立」である。

 事業のポートフォリオが日立製作所と重なっているとはいえ、環境や文化の違いから、ビジネスの仕方は当然異なる。今回はHASのソフトウェアウェアビジネスを手掛けるSystem Management Solution部門(SMS部門)の洗重名 氏(セバスチャン氏)に、東南アジア地域の展開について話を聞いた。

 国内ではITベンダーとして市場をリードする日立だが「東南アジアではチャレンジャーだった」とセバスチャン氏は話す。例えばSMS部門の上位組織で、HASの情報・通信システム事業を統括するICT Solution Business部門が事業を開始したのは1995年。既にHPやIBMといった米国のITベンダーが進出している状況だった。「日立ブランドは家電メーカーとしては浸透していたが、ITベンダーとして認知されているとは言えなかった」とセバスチャン氏は振り返る。

 そういったなか、まず取り組んだのは「ITベンダーとしてのアウェアネスを高めること」だという。広く広告出稿を行い「“We have ICT!”というメッセージを伝えた」のだという。

 その結果、統合システム運用管理ソフトウェアである「JP1」の東南アジア地域におけるファーストユーザーを獲得できたのは2000年のこと。2011年および2012年には運用管理分野の顧客満足度で1位を獲得(Network World Asia誌の調査)するなど、ユーザーを拡大しているという。

 気になるのは、ローカルユーザーと日本企業の現地法人ユーザー(現法ユーザー)の比率だが、現状は「現法ユーザーが80%強」だという。だが「今後のビジネスの伸びしろはローカルユーザーのほうが大きい」といい、近いうちには「フィフティー・フィフティーになるのでは」とセバスチャン氏は読む。SMS部門ではマーケットの拡大のため、ローカルSIerとのパートナーシップを強化しており、将来的には「8対2でローカルユーザーのほうが多くなるようにしたい」と意気込む。

ローカルと現地法人のカルチャーに違いは?

 ただしセバスチャン氏によると、ローカルユーザーと現法ユーザーの間には、システム構築に際しての要求にいくつかの違いがみられるという。

 「東南アジア各国では文化や商習慣が異なるため、ローカルユーザーとひと括りにすることはできない。各国の特性に合わせたアプローチが最も重要となるが、苦労しながらも多々工夫することで顧客を獲得してきている」(セバスチャン氏)。

 例えば現法ユーザーは、導入したシステムをある程度自分たちでカスタマイズし運用するが、ローカルユーザーは「細かな仕様やUIまで、要求どおりに作り込まないと納得されないケースが多い」(セバスチャン氏)。そのため、日本にある開発チームとのコミュニケーションは密だという。開発要望に対する日本側のレスポンスについては「リーズナブル(まあまあかな)」と笑う。

 またローカルユーザーは、何よりも「簡単に操作できることへの要求が強い」とセバスチャン氏は話す。しかし現法ユーザーは「セキュリティーの強化」と「自動化」を求める。これには、現地法人が本国(日本)から要請されるためという事情もあるだろう。

Toshiba Asia Pacificで情報システム部門のマネジャーを務めるジュリアン・ウォン氏。情シスのKPIが、運用業務だけなく業績貢献や営業支援に変化しているというが「どのような施策を打つべきか、正直悩みもある」と明かす

 実際、シンガポールの現地法人としてJP1を利用しているToshiba Asia Pacificでも、導入のきっかけは「タスクスケジューラーの信頼性を高めるよう日本から要求されたため」と同社IT部門の黄永財氏(ジュリアン・ウォン氏)は振り返る。その結果、同社がJP1/AJSを選択したのはおよそ3年前のことだ。

 同様に、セキュリティーを担保することも求められたため、JP1/ITDMによりクライアントの統合管理環境を整えた。直近では、何らかの理由でタスクスケジューラーがダウンした際の復旧時間を最小化するため、JP1/PFMを導入し死活監視を行っている。これも「日本と同様のサービスレベルにするため」(ウォン氏)だという。

 もちろん、同様のソリューションを提供しているITベンダーは他にもある。だが「他のベンダーはすべてリセラー経由の販売だったが、日立は“JP1チーム”がシンガポールに存在しており、われわれの要求仕様に素早く応えてくれた」とウォン氏は評価する。

 ある種、Toshiba Asia Pacificの事例は、ローカルユーザーと現法ユーザーそれぞれの要求が混在していたケースだと言える。HASのセバスチャン氏は「今後は東南アジアでの基礎研究をJP1などの製品に反映できる体制にし、より提案内容を深めたい」と話す。アジアにおけるソフトウェアの“地産地消”につながる日も近いだろうか――。

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