エンタープライズモバイル時代の大活用術

ヨコ展開が始まった企業のスマートデバイス導入最前線エンタープライズモバイル時代の大活用術

スマホやタブレットに対する企業の関心が高まっているといわれるが、その実態はどのようなものか。ITmediaの独自調査と日本スマートフォンセキュリティ協会での調査から探ってみよう。

» 2013年07月08日 09時00分 公開
[編集部,ITmedia]

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 2007年のiPhone発売をきっかけに、まずコンシューマー向けのスマートフォンやタブレット端末(以下、スマートデバイス)の人気に火が付き、少し遅れて、企業でもスマートデバイスへの関心が高まり始めた。最近ではその導入機運が本格的に始まったようだ。

 スマートデバイスに対する企業の意識の実態はどのようなものか。まず、その導入意欲についてITmedia エンタ―プライズが実施した調査からみてみたい。ITmedia エンタ―プライズでは今年3月と6月に開催したスマートデバイス活用セミナーの来場者にアンケートを行った(回答数は3月が153件、6月が92件)。

前向きな活用での導入検討

 スマートデバイスの導入および検討状況について尋ねたところ、「導入している」部門ではいずれの調査でも経営者・役員がダントツで多く、営業部門や情報システム部門でも高い傾向にあった。3月と6月で大きくことなるのは、「導入を検討している」との回答だ。3月では「導入している」と「導入を検討している」との間に開きがみられたが、6月ではほぼ同水準となった。

スマートデバイスの導入/検討状況・3月(ITmedia調べ・複数回答)
スマートデバイスの導入/検討状況・6月(同)

 スマートデバイスに期待する内容をみると、いずれも「顧客への迅速な対応」「社内コミュニケーション・情報共有の向上」「ペーパレス化の推進」「営業、販売現場におけるプレゼン・クオリティの向上」が上位を占めた。スマートデバイスを業績向上や現場業務の効率化に役立てたいという意識が強く、その副次効果として紙文書の削減も期待する傾向にあるようだ。一方でPCや社内スペース、人員の削減といったコスト削減を目的に挙げる回答は1けた台にとどまった。

 導入での懸念事項ではいずれも「盗難・紛失による情報漏えい」と「費用対効果を明確にすることが困難」「デバイス運用管理が大変」「マルウェアやウイルスへの感染」の割合が高い。3月時点では「利用メリットが見いだせていない」「端末価格が高い」という回答も多かったが、6月時点では減少した。

 調査からは、スマートデバイスの導入を検討している企業が導入範囲を限定的なものから全社規模に広がりつつある様子がうかがえる目的も業績向上など前向きなものであり、懸念事項は導入後に課題となる運用管理やセキュリティ対策への関心が強い。単にコンシューマー市場のブームからスマートデバイスに注目しているのではなく、企業の中に取り込んで本格活用したいという姿勢にあることが浮き彫りになっている。

活用フェーズは初期段階

 次に、スマートデバイスを導入している企業での実態はどうか。一般社団法人「日本スマートフォンセキュリティ協会(JSSEC)」が2012年10月に実施した会員企業33社への調査の結果をみてみよう。なおJSSECによれば、回答企業主に情報通信や情報セキュリティ関連企業であり、一般業種よりもスマートデバイス(調査では「スマートフォン」と表現)の利活用認識が進んでいる結果になったとしている。

 回答企業でスマートフォンを利用している職種は、営業(87%)や役員(78%)、研究/開発(67%)が高く、人事や技術総務、財務、経理/法務では半数以下だった。スマートフォンで利用するサービスはグループウェア(58%)やセキュリティツール(46%)、ファイル共有(38%)が高く、経費精算(15%)や勤怠管理(12%)、稟議決裁(12%)、日報管理(8%)は低かった。

 社内ユーザーの利用シーンをみると、外出や移動の機会の多い営業や役員といった職種がグループウェアやファイル共有などを活用して情報の共有にスマートフォンを役立てている様子がうかがえる。そのためにデバイスを管理するツールの利用も多い。一方で、社内業務が中心の職種では利用が少なく、社内手続きを中心とする業務でのサービス利用も進んでいない。

 また、スマートフォン導入の目的と効果を比較してみると、多くの項目において、目的で見込んだよりも高い効果を得ていると感じる傾向にあるようだ。上述のスマートフォン利用が多い職種やサービスでもみられるように、特に「移動時間の有効活用」と「社員同士のコミュニケーションの円滑化」において高い効果を感じていることが分かる。

スマートフォン導入の目的と効果(JSSEC資料をもとに作成)
項目 目的 効果 目的と効果の差
業務生産性向上 73% 70% −3%
社外での業務や在宅勤務の促進 50% 53% +3%
カタログや資料などの印刷物の削除 13% 10% −3%
顧客へのプレゼンや商品説明の向上 23% 27% +4%
在庫の確認や発注の効率向上 3% 3% 0%
移動時間の有効活用 47% 63% +16%
社員同士のコミュニケーションの円滑化 23% 43% +20%
通信コストの削減 13% 7% −6%
災害時の安否確認や事業継続性の強化 23% 27% +3%
端末の管理コスト削減 3% 0% −3%

 最後に回答企業で導入されているスマートデバイスの種類をみると、iPhone、iPad、Androidスマートフォンが7割以上を占めた。以下は、Androidタブレット(52%)、Windows Phone(19%)、BlackBerry(19%)、Windowsタブレット(11%)だった。この調査が行われた2012年秋のコンシューマー市場を振り返ると、販売されるAndroidタブレットの種類が大幅に増え、タッチ操作を重視したWindows 8がリリースされた。

 企業のスマートデバイス利用では営業職や役員などがiPhoneやiPad、Androidデバイスを使って、情報活用やコミュニケーションの効率化につなげるスタイルが確立されつつあるといえそうだ。今後は社内が中心となる業務や職種において、Windows系デバイスも含めた活用スタイルをどう実現していくかが焦点になると予想される。

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