ショッピングをもっと楽しく、マルチチャネル融合のリーダーを目指す英国の老舗チェーンストアOracle OpenWorld San Francisco 2013 Report

4日目を迎えたOracle OpenWorld San Francisco 2013では、より良い「顧客体験」によってビジネスを成功に導くOracleのソリューションに焦点が当てられ、英国小売最大手のTescoが登場、リアル店舗とオンラインを融合し、ショッピングをもっと楽しいものにしたいと話した。

» 2013年09月26日 10時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
Oracle OpenWorld開幕以降、破竹の連勝でアメリカスカップを防衛したオラクルチームUSA。カンファレンス参加者も多くが湾に駆けつけ勝利を祝った

 米国時間の9月25日、6万人が参加する過去最大の「Oracle OpenWorld San Francisco 2013」は4日目を迎え、「カスタマーエクスペリエンス」(顧客体験)をテーマに午前の基調講演が行われた。急速なデジタル化が進む中、より良い「顧客体験」によってビジネスを成功に導くソリューションにOracleも力を入れており、昨年のOracle OpenWorldでは初めて「Oracle Customer Experience Summit」を会場近くのホテルで併催したが、今年は装いも新たに「CX @ OpenWorld」とし、メイン会場のモスコーニセンターで大々的に行われている。

 スマートフォンとソーシャルメディアの浸透が、人の気持ちを瞬く間に伝播させる新しいインフラを作り出したのはご存じのとおりだ。

Oracleの製品開発担当グループ副社長、デイビッド・バップ氏

 「人々は常に接続され、新しい情報が届けられ、体験を共有している。テクノロジーが急速に人々の生活や行動を変えていると同時に、期待や要求もどんどん高まっている。そのため、そうした期待や要求が満たされないと、すぐに不満を感じてしまう」と話すのは、Oracleで製品開発担当のグループ副社長を務めるデイビッド・バップ氏だ。

 商品やサービスに不満を抱いた消費者の26%はソーシャルメディアにネガティブなコメントを書き込んでいる、という調査結果もあり、顧客体験をより良いものにする取り組みがほとんどすべての企業で求められている。ソーシャルメディアは、効果の高い新たなマーケティング手法を生み出す一方で、商品やサービスへの不満が広まれば、長年築いたブランドもあっと言う間に失墜しかねないからだ。

 また、今や市場にはモノがあふれ、消費者の価値観も多様化しており差別化の難しい時代だ。大量生産・大量消費時代は終わり、消費者は「品質」や「機能」といった商品単体の価値ではなく、購入から所有に至るライフサイクル全体の経験から得られる価値を重視し始めている。

 デジタル化によって顧客接点の多様化も進んでいるが、店舗、コールセンター、Web、モバイル、ソーシャルで顧客に対応する組織・プロセスがばらばらで情報も共有されていなければ、顧客の本当の姿を把握できないし、ライフサイクル全体の満足度を高めることも難しい。例えば、クレームの処理に手間取れば、顧客はすぐに離反しかねない。

 顧客体験をエンドツーエンドでより良いものにするため、Oracleでは以下の5つのコンポーネントとそれを支えるクラウドサービスのようなツール群を幅広く取りそろえている。

  1. Marketing
  2. Commerce
  3. Sales
  4. Service
  5. Social

 「顧客体験をより良くするには、アプリケーションは包括的でなければならないし、すべてクラウドレディでなければならない」とバップ氏は話す。

2020年の小売業はまるでSF小説の世界に

 英国の老舗チェーンストアがOracleの包括的なソリューションを活用し、CIOとCMOが一緒になって次世代の小売業を模索している。1919年創業でもう100年近い歴史を誇る英国最大手のTesco Storesだ。

Tescoのマイク・マクナマラCIO(左)とマット・アトキンソンCMO

 「テクノロジーによって小売業も光のスピードで進化している。2020年の小売業はまるでSF小説の世界だろう。2年前には普及していなかったFacebookで今や130万人がTescoに“いいね!”を押してくれ、毎日1000以上の書き込みがある。スマートフォンのアプリケーションも100万人がダウンロードしてくれている。顧客はデジタルの波に乗っている。そうであるならば、われわれも乗らなければならない」と話すのは、バップ氏からステージに招き上げられたTescoのマイク・マクナマラCIOだ。

 同社では、Facebookでレシピを公開、気に入った料理があれば、そのための食材を宅配してくれたり、「Click & Collect」と呼ばれるサービスによって店舗で受け取ることのできる仕組みを英国では展開している。

 この日、マクナマラCIOと一緒にOracle OpenWorldのステージに立ったTescoのマット・アトキンソンCMOは、「リアルの店舗とオンラインをシームレスに融合することが大切になるし、さらに鍵はカスタマイゼーションだ。テクノロジーによって“個”客に合ったクーポンをタイミング良く提供することでサービスをさらに差別化できる」と話す。

 小売業は、価格が安く、品ぞろえが良く、利便性が高ければ顧客への価値も高まる。クーポンによってお得感を出し、オンラインショップの仕組みによって品ぞろえを豊富にし、宅配でも店舗でも商品を受け取れるリアル店舗とオンラインの融合(O2O)は近い将来、小売業の主流になるとみられている。

 O2Oの良い事例として知られる韓国のバーチャルストアもTescoが展開しているものだ。地下鉄のホームに食材の写真が貼り出され、それぞれ付けられたQRコードを顧客がスマートフォンで読み取り、ネット決済すると自宅まで配送してくれる仕掛けだ。忙しいビジネスマン/ビジネスウーマンには重宝されているという。

 Tescoのアパレルブランド、F&Fでは、さらに多くのテクノロジーが活用され、リアル店舗とオンラインのシームレスな融合が図られている。F&Fのオンラインショップでは、アップロードした自分のデジタル写真と選んだ服を組み合わせて見せる「バーチャル試着」の機能が提供されているが、これを店舗でも行えるようにしている。もちろん、自分にあったサイズが店舗になければ翌日には宅配してくれる。

 「F&Fでは、オンラインの体験を店舗でも楽しめるようにした。テクノロジーでわれわれはマルチチャネル融合(オムニチャネル)のリーダーになり、ショッピングをもっと楽しいものにしたい」とアトキンソンCMOは話す。

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