Windows 8.1は選択肢になり得るか? マイクロソフトが推す法人向けの新機能

Microsoftが間もなくリリースする「Windows 8.1」では法人ユーザーに焦点を当てた新機能が多数盛り込まれるという。XPのサポート終了も迫るだけに、Windows 8.1は移行先候補の1つに挙がるだろうか。

» 2013年10月14日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 Microsoftは、日本時間の10月17日夜にクライアントOSの最新版となるWindows 8.1の提供を開始する予定だ(製造工程向けリリースは既に開始済みで、同日以降に搭載端末が発売される)。これに先立って日本マイクロソフトは11日、Windows 8.1の新機能に関する事前説明会を行った。

 Windows 8.1は、2012年秋にリリースされたWindows 8のアップデートに当たる。説明に立った業務執行役員 Windows本部長の藤本恭史氏は、「Windows 8ユーザーからのフィードバックを分析し、今、そして、将来におけるデバイスでより良く利用していただくための改善と向上を図る」と宣言した。

Windows 8.1における法人向け機能のポイント

 Windows 8.1の法人向け新機能についてWindows本部シニアマネージャーの西野道子氏は、(1)ユーザー体験、(2)モバイルとBYOD、(3)セキュリティ――を特徴として挙げた。

 まず、ユーザー体験の点ではデスクトップ画面にスタートボタンが追加され、Modern UIとデスクトップの画面の切り替えがスムーズになる。またタスクバーとナビゲーションのプロパティからサインイン時に直接デスクトップ画面を表示したり、Modern UIのスタート画面とデスクトップの背景を同じものにすることができる。

 これらはコンシューマー向けも同様だが、法人向けではModern UIのスタート画面のレイアウトを変更できるようになっている。管理者が画面レイアウトを設計し、PowerShellからレイアウトファイルとして出力する。これを全社や部門単位などでグループポリシーとして配布し、ユーザーの端末に強制的に適用したり、変更を禁止させたりすることができる。端末を複数の社員で共同利用するようなシーンに対応したものだ。

スタート画面を部門ごとにカスタマイズしたり、ロック画面からすぐに利用したいアプリを設定したりできる

 次にモバイルとBYODの点では、OMADMプロトコルによるサードパーティー製のMDM(モバイル端末管理)ツールへの対応強化が挙げられる。これによって、インベントリ収集やVPNなどのネットワーク設定、遠隔操作による特定のデータの削除(セレクタブルワイプ)、Modern UIアプリの配布、証明書の展開といった、既にiOSやAndroid向けのMDMで利用できるような運用管理の機能がWindows 8.1でも可能になる。VPNクライアントもF5、Juniper、Check Point、Dell(SonicWALL)のソフトがプリインストールされる。

 また、新機能として「ワークプレースへの参加」と「ワークフォルダ」が提供される。特にワークプレースへの参加機能は、「Windows RTではActive Directoryのドメインに参加できないという課題への1つのアプローチになる」(西野氏)という。同機能は個人所有の端末をActive Directoryに登録し、デバイスクレームを発行することで、個人所有の端末に対する企業側の管理を可能にする。ユーザー側では自身の端末から社内リソースにアクセスできるようになり、企業側ではユーザーの端末に対してActive Directoryに近いレベルの管理ができるようになるという。

Windows RTもActive Directoryによる一定の管理下に置けるようなる

 一方のワークフォルダ機能は、複数のWindows端末からユーザーのデータにアクセスできる一種のファイル同期機能にあたる。後述するセレクタブルワイプを利用して盗難・紛失などの際に業務データだけを遠隔消去したり、IRMとの連携でアクセスコントロールや暗号化を適用したりといったことも可能だ。

 セキュリティ面でもさまざまな機能強化が図られているが、特にOSボリュームを暗号化する「デバイス暗号化」機能は8.1から全てのエディションで利用できるようになる。同機能やBitLockerを有効にしている端末ではコンピュータアカウントのロックアウトが行え、セレクタブルワイプではメールや添付ファイル、ワークフォルダ内の指定データ、Wi-FiやVPNプロファイル、証明書の削除、MDM経由で配布したアプリのアンインストールが行える。

セレクタブルワイプ機能により、BYODなどでは個人データと業務データの一定の切り分けができるようになる

 このほかに、特定用途に限定する端末では「アサインドアクセス」機能を利用できる。事前に指定したアカウントでアクセスすると、管理者が指定したWindowsストアアプリを1つだけ実行できるもので、他のアプリを実行したり、システムファイルにアクセスしたりすることはできない。キオスク端末のような用途に適しているという。

 法人ユーザーの観点ではWindows 8からユーザーインタフェースが大きく変わったことにとまどいの声も聞かれる。今なお利用率が高いとされるWindows XPのサポートが2014年4月に終了するが、その移行先OSとしては、Windows 8よりもWindows 7が選ばれる傾向にあるようだ。

 しかし、Windows 8.1では同社が今後のデバイストレンドを見据えて開発したというWindows 8を、法人ユーザーにも広く利用してもらうために、こうした新機能の追加や機能強化を多数行った。藤本氏は、「今まではPCとタブレットの2台持ちをしなければならなかったが、これからは1台持ちで済むという理由で導入いただくケースが増えている」と強調する。

 Windows 8.1ではWindows 7までの使い勝手を再現しつつも、BYODのような新たな利用スタイルにも対応するための管理機能やセキュリティ機能が盛り込まれた。企業でのモバイル導入が本格し、先行導入した企業では早くも端末のリプレース時期を迎えている。藤本氏の言う「2台持ちから1台に」ということに加え、これからモバイル活用など新たなクライアント環境を構築して活用を検討している企業も意識した対応といえるだろう。Windows 7も発売から3年が経過し、これから選ぶOSの選択肢としてはWindows 8.1も有力になるかもしれない。

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