クラウド運用管理

仮想化前提のシステムで失敗するインフラ作りの問題点クラウドファースト時代の運用ベストプラクティス(2/2 ページ)

» 2013年12月04日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
前のページへ 1|2       

インフラ選択の多様化

 仮想化やクラウドと並んで、最近ではITインフラ向けの新たなソリューションとして「統合型システム」がベンダー各社から提供されるようになった。統合型システムはサーバやストレージ、ネットワークなどITインフラに関わるリソースを、ベンダーの推奨する設定や構成によってパッケージ化したもので、原則として設計・構築から運用までのライフサイクルはベンダーの推奨に基づくものとなっている。

 宮原氏は、「これまでの仮想化はフルオーダーメイドで作られ、次第にテンプレート化やメニュー化が進んできた。そうなると、次に自動化や標準化が焦点になる」と話す。自動化/標準化にはさまざまな解釈があるものの、一般的には人手に基づく作業をシステムで行うようにし、人的ミスなどのリスクや担当者の負担などを軽減するものとされる。

 多くの企業では運用を含めたシステムのライフサイクルを、企業独自の経験やノウハウに基づくものにしている場合が大半だ。宮原氏によれば、統合型システムはERPに似ており、ERPの導入でビジネスプロセスを標準化するというシーンでは自社のスタイルをベンダーのベストプラクティスに合わせていった。「いわば、既成のスーツに体を合わせるようなもの」(宮原氏)

 フルオーダーメイドのまま仮想化の利用が進むと、今度は仮想化環境が個別最適で構築された従来型システムのようなサイロ化の問題に直面する可能性が出てくる。統合型システムでベンダーが提供するベストプラクティスに則ればこうした問題は回避できるかもしれない。予め用意されたテンプレ―トやメニューを活用すれば、新規システムのインフラも迅速に構築できるだろう。「スピード感が要求されるが、統合型システムのスタイルに合わせる方が早いし、時間の節約につながる」(宮原氏)

 ただし、統合型システムではどのようなアプリケーションをどのように利用するのかといった点を見極めておく必要がある。システムの使い方は企業によって異なり、統合型システムの「型」だけで全て対応できないこともあるだろう。そのためには、やはり既存のシステムの現状把握が欠かせない。「現状把握もできていない状況で統合型システムを適用するのは厳しい」(宮原氏)

 こうしたことから統合型システムの導入は、企業による使い方にあまり大きな違いが無いデスクトップの仮想化の基盤や、新システムとしてのデータ分析の用途が先行している。

理想の運用を実現するには

 仮想化、クラウド、統合型システムといった技術が相次いで登場したことで、ITインフラは今、アーキテクチャも含めた根幹から見直す時期に差し掛かっていると言えそうだ。宮原氏によれば、Webサービスを提供する企業では仮想化を活用して物理サーバを減らしながらも、処理能力が要求されるシステムでは物理サーバを投入するといった “切り分け”がしっかりできているという。

 「従来は物理サーバばかりだったが、サービスのアーキテクチャが定まってきたことで、仮想と物理を適用する社内基準も明確になっている。どちらか一方ではなく部分最適化ではあるが、場あたり的な対応ではなく、アーキテクチャに基づいている」(宮原氏)

 運用の最適化に向けて、既に仮想化に取り組んでいる企業ではリソース監視により、構成などが利用状況に合致しているか、また、数値データに加えて業務部門などのユーザーのフィードバックも加味しながら再点検することが望ましいという。

 また、これから仮想化へ本格的に取り組むという企業なら、仮想化を前提にしたシステムの実現に着手しやすいタイミングにあり、「今までの運用で十分にできていなかった点を踏まえて、きちんとしたアーキテクチャによる仕組みを作っていくべきだろう」と宮原氏はアドバイスしている。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ