クラウド運用管理

VM1000台を1人で管理できますか? クラウド前にやるべきことクラウドファースト時代の運用ベストプラクティス(2/2 ページ)

» 2013年12月18日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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VM1000台を1人で管理できますか?

 海外に目を向けると、最近では一人の管理者が4000台や5000台の仮想サーバを管理している企業の事例が出始めている。150万人のユーザーを抱えるあるSNS企業は、たった4人でそのサービス規模に必要なサーバを運用しているとのことだ。こんな運用を実現できているのは、やはり自動化ツールを駆使し、プロセスも標準化して業務効率を極限まで高めているからといえる。

 こうしたことから、長嶋氏のもとには「運用の自動化」に関するユーザー企業からの相談が増えているという。ガートナーが実施した「運用の自動化」に対するユーザー企業の取り組み状況の調査では「自動化が進んでいる」と答えた企業は約21%、「進んでいない」という企業は約72%だった。

 自動化が進まない背景には、前述のように現時点ではまだ人海戦術で運用がギリギリ回っていることによる危機感の薄さや、運用に対する投資意欲が消極的であるといったことが挙げられる。長い歴史の中で一見問題無く機能している運用体制を変えるというのは、心理的にも前向きになりにくいし、投資をしたところで、その効果がすぐに出るとは限らない。

 「実は2013年になって、日本でも1人で1000台の仮想サーバを管理している企業が登場した。一方、ある製造業は1人で20台を管理されていた。運用自動化に対する企業の取り組みが相当に二極化しており、この格差がますます広がっていく。運用に苦しんでいる企業はここで“脱出”しないと、もっと苦しくなるだろう」(長嶋氏)

 長嶋氏は、自動化に取り組むことができるか否かには、「意思決定者」の存在も大きく影響すると指摘している。自動化が進んでいる企業にはIT環境全体をみている“リーダー”がおり、問題を解決するために必要な広い視野と実行力を発揮している。特に競争の激しい市場に身を置く企業は、常に問題意識を持ち、改善に対する取り組みも積極的であるという。

 運用の負荷をどう軽減していくか。「それなら、自動化ツールの活用が近道では」と思うかもしれない。ツールを使えば、例えばパッチ適用の作業期間を数カ月から数日へ劇的に短縮されるだろう。しかし長嶋氏は、単に自動化ツールを導入すれば運用の問題を解決できるわけではないと警告する。

サービスって何ですか?

 「ツールやテクノロジーは何かを実行するための道具でしかなく、実行する対象が明確になっていないと、期待通りの効果は得られない」(長嶋氏)

 例えば、仮想化技術はサーバを迅速かつ少ないコストで構築するための手段であり、仮想化が求められるのはコストを最適化したり、ビジネスのスピードを確保したりするためだ。その必要性が無くなれば、仮想サーバならデータを消去するだけで済む。ところが、仮想サーバは増える一方で、減っている、あるいは減少分と相殺されているといった話は聞かれない。

 自動化ツールの活用でも同様に、管理者の負担を軽減したり業効効率を高めたりするには、まずツールを適用するシステムがどんなものであり、どんなプロセスで運用しているのかを理解していることが前提となるわけだ。突き詰めると、そのシステムとは、誰に、何のために、どういうものを「提供する」のかという根本的な点に行き着く。長嶋氏は、実はこの原理がクラウドを取り入れるこれからのITインフラの運用において非常に問われてくると指摘する。

 「以前のシステムは『設計・構築』と『稼働』の間で線引きがなされ、『稼働』後の維持管理業務が運用だと考えられていた。しかし、クラウドでは『サービスを提供し、管理する』ことが運用になり、システムの構築や変更と維持管理を同時並行で回していくことになる」(長嶋氏)

 ITは何を提供するのか――今、IT部門にはこの原点に立ち戻り、将来にわたるITの価値提供に必要な基盤を実現する取り組みが求められているのだという。

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