ソニーのVAIOはどこへいく? 日本での影響を考える萩原栄幸の情報セキュリティ相談室 番外編(2/2 ページ)

» 2014年02月14日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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なぜソニーはVAIOを見捨てたのか?

 PC市場の流れをみていて実感として思うものが幾つかある。まず世の中が、明らかにIT分野でダントツ王者だったPCをその座から引きずり出そうとしていることだ。その結果がだんだんと出ている。Macを含めた世界のPC出荷台数は減少し続けている。PC Watchの記事が伝えているところによれば、世界のWindows出荷台数は約7%弱のマイナスであり、10年前には考えられなかった状況である。その中でVAIOは、量の拡大を目指したものの、新興国での敗退などが加わり、なんと約23%のマイナスだ。世界シェアも低下し続け、1.8%しかないという惨状である。

“VAIOらしさ”は生まれ変わるのか?

 そして、VAIOは明らかにコンシューマ向けの製品であったため、現在のWindows XP移行対応の「神風」がほとんど吹いて来なかった。法人向けにも強いDellやHPなどとは全く違っていたと思う。低価格化を目指した結果として、VAIOらしいユニークなデザイン、機能などの面でも他社と比較して突出したものが少なくなったということも大きいだろう。

 しかも、Windows XPからの買い替え需要が余りなかったというならまだしも、コンシューマを中心に「PCはいらない」と判断する人たちが増えている事実も大きく影響している。これでは「神風」どころか、台風で母屋が揺らいでいるという状況に等しいのではないか。実際、筆者の知人の何人かは書斎にあったたくさんのPCを1台に集約したり、タブレットに乗換えたりしている。VAIOよりiPhone 5の方が魅力的と考えた人は多かったのではないか。

ソニーさんごめんなさい!

 筆者は、10年以上に渡ってセミナーではソニーに低い評価をしていた。ソニー製品は技術者としては許されるかもしれないが、とても一般人を対象にした製品とは思えず、操作方法や機能があまりにもアンバランスであるとの実感を持っていたからだった。

 情報セキュリティの分野においても、グループ会社とはいえ、当時のSONY BMGが役員会承認のもとで音楽CDにrootkitを埋め込んでいたこともあった。これは絶対に許されない行為であり、しかもその後の日本法人の対応も相当にひどかった。

 しかし、ソニーがVAIOを切り捨てることは筆者にとって想定外だった。筆者の持つPCの1台はVAIOだ。高いものだったがとても愛着がある……。「ごめんなさい! 今からでも遅くないのでソニー精神を入魂したVAIOをずっと提供してくれませんか……」。今の率直な想いだ。

 ところで、日本は「情報戦」としてPCの調達をどう考えているのだろうか。きちんと対応しているなら良いのだが、米国ではスマートフォンでHuaweiやZTEの製品を排除すべきという問題提起がなされ、PCではLenovoへの大きな懸念を抱いているという。昨年にはLenovo製品に、ユーザーの情報にアクセスできる工作が施されているとしてオーストラリア、米国、英国、カナダ、ニュージーランドの5カ国の情報機関が使用を禁止していると報じられている。

 VAIO事業に関して新会社は今後国内拠点を重点として、市場回復を図るという。それなら、この際に「Made in Japan」を全面に出して、官庁や自治体が安心して導入できるPC、壊れにくいPCを目指すというのはいかがだろうか。VAIOのコンシューマPCというイメージからの脱皮である。

 こうした面からも、ソニーという生みの親から離れていくVAIOの行く末が日本にとって良いものであることを願わずにいられない。

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萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。

組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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