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「スター・ウォーズ」「トロン」を手掛けた日本のCGスタジオが“システム大刷新”に踏み切った理由有名CGアニメの舞台裏(1/4 ページ)

「トランスフォーマー プライム」「シドニアの騎士」など多くのCGアニメ制作を手掛けるポリゴン・ピクチュアズは、さらなる大規模・ハイクオリティーな作品づくりに向けてシステムを大きく刷新したという。その全貌とは――。

» 2014年09月29日 07時30分 公開
[本宮学,ITmedia]
photo ポリゴン・ピクチュアズがCG制作を手掛けた作品一覧。海外作品のほか『山賊の娘ローニャ』(宮崎吾朗監督作品)などビッグネームが並ぶ(クリックで全て表示)

 『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』『トロン:ライジング』『トランスフォーマー プライム』――アニメファンでなくても誰もが1度は聞いたことがあるであろう世界的なアニメーション作品。これらの3DCG制作を従業員300人あまりの日本企業が手掛けていることをご存じだろうか。

 その会社の名は、東京都港区に本社を置くポリゴン・ピクチュアズ。同社は1983年の創業以来、国内を中心にTVアニメや映画、ゲームなどさまざまな作品のCG制作を手掛けてきた。さらに2000年代に入ってからは海外展開を本格化させ、近年では冒頭に記したような海外有名作品の制作にも数多く携わっている。

 そんな同社は2013年、複数のアーティストやスタッフを巻き込んでの制作業務を支える「パイプラインデータベース」と呼ばれる仕組みを大きく改修したという。システム刷新の背景と狙いを、ポリゴン・ピクチュアズの山森徹さん(テクノロジー部 部長)と飯山公子さん(テクノロジー部 ワークフローグループ リーダー)に聞いた。

100人以上の“徹底した分業制” Excelでの進ちょく管理がネックに

 いまや世界でも有数の3DCG制作会社となったポリゴン・ピクチュアズ。躍進の理由の1つは、創業当初から貫いてきた「分業制」にあるという。

photo 山森さん

 「当社のように大規模なTVシリーズ作品を制作できる日本のCG会社は数少ない。数人のジェネラリストによるCG制作ではなく、ある意味“製造業”のような作り方というか、完全に制作体制を分業しているからこその強みがある」と山森さんは話す。

 具体的には、CGの制作工程を10以上に分類し、工程ごとに各分野のスペシャリストを配置。こうして得られる「スピード」「品質」が評価され、2000年代後半からは海外有名作品の制作案件も数多く受注するようになっていった。

 だが、そこで新たな課題となったのが“制作進ちょく管理”の難しさだ。徹底した分業制を貫く同社では、1カットの制作に10人以上、作品全体では100人以上のCGアーティストが携わるケースもある。こうした中「Excelとメール中心で進ちょく管理を行っていたため、作品の制作状況を正確かつリアルタイムで共有するのが難しかった。大規模案件になればなるほど、作業状況を把握しづらくなっていった」と飯山さんは振り返る。

 多数のCGアーティストが担当している作業状況を正確に管理し、高品質な映像を効率よく制作したい――そこで同社はExcelに代わる新たな進ちょく管理システムとして、パイプラインDBの構築プロジェクトをスタートする。

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