サンリオでは商品の品質を「仕様書」「サンプル」「初回ロット」「抜き取り検査」と4工程で管理している。子どもが使う製品が多いため、安全面の管理は非常に重要なポイントとなる。品質管理のシステムを構築し、サンプルが不合格になるといった品質上の問題を蓄積していくことで、商品化までの時間を短縮できるという。
「例えば担当者が変わってしまうと、引き継ぎがあっても、過去のトラブルや気をつけるべきポイントが次の担当者にすべて伝わるとは限りません。属人化しがちなノウハウを共有できるようになったことは、大きな意義だと思います」(古川さん)
最近では、海外工場での生産や輸入についてもFileMakerのシステムを活用している。サンリオ商品の約70%が海外で製造されているが、国内と同様に製造にあたっては申請を義務付けている。いわゆる“パクリ”製品の流通を防ぐためだ。サンリオは現在、海外ライセンス事業も大きな収益源となっている。このシステムは「知的財産を守る生命線」(古川さん)だが、今後さらに重要度が増していくだろう。
FileMakerによる情報管理基盤を整備した結果、コストも減り、開発の遅れによる発売遅延も10分の1未満に減ったという。そして、同社が予想していなかった価値も生まれた。それは蓄積されたデータだ。同社はユーザーから届いたクレームなどもデータベースに登録しているが、それが商品開発にも役に立っているそうだ。いわばこれは、サンリオ独自のデータベースと言える。
「業務改善のためのツールを作っていたら、いつの間にか“唯一無二”のデータベースが出来上がっていた。これを作ってくれたのは開発者ではなくエンドユーザー。金銭的な価値はつけられないが、これからのサンリオを支える重要な価値をもたらしてくれる」(古川さん)
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