「自作クラウド」の東京工科大学、Dockerベースのシステムも構築

基幹システムのクラウド化を学生が担ったことで注目を集める東京工科大学が、コンテナ型仮想化技術のDockerを利用して新たなシステムを構築した。

» 2015年02月03日 08時00分 公開
[ITmedia]
東京工科大学(Webサイトより)

 東京都八王子市に本部がある東京工科大学は、学生の手で開発、構築されたクラウド基盤を使って全学生約8000人向けに提供する学内システムを運用するなど、ユニークな取り組みで注目を集める。新たに、コンテナ型の仮想化技術「Docker」を活用した学内システムを構築し、1月から全学での運用をスタートさせた。

 同大学では約100台の学内サーバをほぼ“全廃”し、複数のクラウドサービスを組み合わせたハイブリッドクラウド環境に移行し、学生による「自作クラウド」で学内システムを運用している。特に自作クラウドは、コンピュータサイエンス学部と修士課程の学生がインフラの構築からミドルウェアやサービスの開発までを手掛けて実現した。

 Dockerによる学内システムの構築は、自作クラウドの取り組みの発展形として行われたという。構築は、自作クラウドにも携わった同学部の大学院生と学部生の3人が開発から運用までを担当している。

 Dockerは、ミドルウェアやアプリケーションなどの実行環境を抽象化(コンテナ化)するオープンソースの技術。一般的な仮想マシンでアプリケーションを実行する形とは異なり、ハイバーバイザに依存しないことから、特にアプリケーションの“可搬性”を実現する方法として注目を集める。例えば、開発環境で稼働しているアプリケーションを本番環境へ移動したり、異なる本番環境に移したりすることが容易にできる。アプリケーションの稼働環境を構築する手間やコストを削減しつつ、スピーディに稼働できるなどのメリットがある。

一般的な仮想マシン(左)とDockerの違い。アプリケーションの実行環境を“コンテナ”にすることで稼働基盤の選択肢も広がる(DockerのWebサイトより)

 同大学ではDockerを生成する機能やリクエストを転送する機能などを備え、Dockerイメージ(アプリケーションの実行環境)を様々な基盤に配備したり、管理したりする「Docker管理機構」を開発。学生が研究や実習などで作成したプログラムを、「大学ポータル」から管理機構を経由し、Dockerイメージとして学内システムや外部のクラウド環境で稼働できるようになった。

東京工科大学が新たに開発したシステムのイメージ

 その効果について大学側は、ハイパーバイザを使った従来型に比べてコストが半分以下になる一方、拡張性のある基幹システムを運用できるようになると説明する。人工知能のような技術を手軽に教育サービスで活用できるという。

 同大学では2015年度からDockerを活用するプロジェクト演習などに取り組み、実践的なICT教育の充実化や学内サービスの向上を図る。将来的に大学院教育でクラウドを活用した産学連携など、高度な実学教育も計画しているという。

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