ICT活用に積極的な“医療機関”が選定したパブリッククラウド──長野市民病院の場合医療機関とフォッサマグナ 日本データセンターの関係(1/2 ページ)

24時間365日の救急医療を、災害時にも──。機密情報を扱う医療機関が導入したパブリッククラウドとは何か。ICT活用に積極的な長野市民病院はなぜ「Azure」を選んだのか。

» 2015年02月12日 21時07分 公開
[ふじいりょう,ITmedia]

 約55万人が暮らす長野医療圏の中核をなす医療機関の1つに、公益財団法人長野市保健医療公社 長野市民病院(長野県長野市/竹前紀樹院長/病床数400床 以下、長野市民病院)がある。厚生労働省が指定する地域がん診療連携拠点病院として、さらに電子カルテなどの院内システムのICTシステムの活用に積極的な同院は、2011年3月11日の東日本大震災、長野県北部地震(翌3月12日に発生)を経験し、「災害時の診療継続性」ための体制の構築が必要と強く感じていた。

photo 長野市民病院のWebサイト

 1995年に開設した長野市民病院は、2015年2月現在、病床数400床/30診療科という規模の長野医療圏北部の基幹病院として先進医療を提供。24時間365日の初期救急診療を提供するほか、「地域がん診療連携拠点病院」「地域医療支援病院」としての重責を担っている。

 開設当初の1995年より、先だってオーダーリングシステム(医療現場の一部業務を電子化し、病院業務の省力化とサービス提供の短縮化を目指す「検査・処方などに係る情報伝達システム」/出典:日立製作所 電子行政用語集)を導入したほか、2011年2月末には電子カルテの運用を開始するなど、同院はICTの活用に積極的な医療機関としても知られている。「年間約4200台の救急車を受け入れている。救急隊や地域の医師の方々からの電話連絡を医師が直接受け取り、速やかに対応していることも当院の特色」(竹前紀樹病院長/出典:マイクロソフトWebサイト)。

 なお、2015年現在は診療情報管理室のスタッフがETL(Extract Transform Load)ツールとBI(Business Intelligence)ツールを使い、院内システムからデータを抽出し、日々の患者数や病床利用率などを自動的に可視化する取り組みもはじめている。それらのデータは院内ポータルサイトに掲示され、医療の現場の情報や知識の共有に活用されている。

経緯と課題:「24時間365日の救急医療を災害時にも提供する」ためのバックアップ体制を

 電子カルテシステムを導入した11日後、東日本大震災が発生。翌日の3月12日には長野県栄村と新潟県津南町の境界付近を震源とする最大震度6弱の長野県北部地震(通称)に遭遇した。

 「当院では大規模な災害発生時を想定して、患者が押し寄せた場合の受入訓練を毎年行っています。こうした災害時に対応できるよう、院内のシステムはネットワークも含めて二重化を図っており、院内にデータバックアップを取っています。しかし、それだけでは安心できないということを、電子カルテ運用の開始直後に思い知らされることになりました」(診療情報管理室室長圏副院長の宗像康博氏 出典:マイクロソフトWebサイト、以下同)、災害時の診療継続を支えるデータバックアップ体制が課題として浮かび上がったという。

 「この災害をきっかけに、院内からデータ保全を求める声が高まりました。災害によっては地域一帯が停電することも考えられますし、集中豪雨などによって院内に浸水する可能性も考慮しなければなりません。対策としては、長野から遠く離れた場所へデータバックアップをとること。しかし、実現に必要なコストが高額になり、なかなか先に進めることができませんでした」(宗像氏)

 遠隔地でのデータバックアップ体制、もちろん医療情報という機密情報を扱うため、安心、安全な運用が保証されるソリューションが求められる。とはいえ、100年に1度という大災害の対策にかけることができる予算は当然、無限ではない。コストメリットを軸にクラウドサービスの利用を含めた比較検討を2011年より3年間重ねた結果、理想的なソリューションとして、2014年2月に日本データセンターを東日本と西日本の2拠点に開設した日本マイクロソフトのパブリッククラウド基盤「Microsoft Azure」と、QNAP「Turbo NAS」を選定した。

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