ICT活用に積極的な“医療機関”が選定したパブリッククラウド──長野市民病院の場合医療機関とフォッサマグナ 日本データセンターの関係(2/2 ページ)

» 2015年02月12日 21時07分 公開
[ふじいりょう,ITmedia]
前のページへ 1|2       

対策と効果:クラウドの特性を生かしたコスト抑制、西日本データセンターの存在も決め手の1つに

 新たなクラウド基盤とファイルストレージの導入により、次のような効果があったという。

  • 自院運用のデータセンターに比べ、低コストを実現
  • フォッサマグナから離れた場所にある西日本リージョンで、より安心できる運用体制に
  • データを3重化し分散保管するなど、高いセキュリティを確保
  • 小型のNASも活用することで、被災時の携帯搬送も可能に

 新たに導入した体制は、院内に置く小型サイズのTurbo NASと、プライベートクラウドのAzureによる複数段構えのものとなる。RAIDで二重化したTurbo NASは、被災などにより機器の基盤が破損した場合にも新しい筐体に差し替えて復旧できる体制に。被災時にスタッフが手にして避難できることも想定している。合わせて1日1回、圧縮/暗号化した電子カルテデータのフルバックアップを日本データセンターで運用するプライベートクラウドのAzure上へ保存する体制を構築した。

 2014年9月に採用を決定。そこから運用開始まで、1カ月という短期間で済ませられた。既存のバックアップ環境に変更を加える必要なく導入できた活用の幅の広さ、さらに費用の安さに加えて、設定の簡単さや将来の拡張性がよい評価につながったという。

 「Azureのストレージは、今後の拡張に応じて柔軟に増減できます。将来的にPACS(医療用画像管理システム)の画像データなどをバックアップするような体制としても、容量の心配がありません。こういった柔軟性はクラウドならではのメリットです。クラウドの特性を生かし、スモールスタートでコストを抑制できました」(診療情報管理室システム管理チームリーダーの高野与志哉氏/出典:マイクロソフトWebサイト)

photo 国内顧客向けのMicrosoft Azureは、東日本と西日本、2拠点の国内データセンターで運用される

 最後に、(日本では)Azureが東日本、西日本の2拠点の国内データセンターで運用される体制になったことも選定の大きな決め手となった。レイテンシ、パフォーマンスの改善のほか、国内顧客に対しては、国内だけでデータ保持(データが国外へ出ない)や災害対策を実現できるのがメリットだ。

 長野市は比較的地盤が固いと言われる地域だがフォッサマグナの上に位置しており、今後、大地震などの災害に見舞われる可能性がある。フォッサマグナから遠く離れたデータセンターを利用できる安心の体制は大きかった。Azureはこのほかに、データが3重化され、分散して保管される体制も「高いレベルで、安全と安心が保たれるクラウド」(高野氏)との判断につながった。

 災害時診療継続のためのデータバックアップ体制を整えた長野市民病院では、院内システムのクラウド移行や院内システムを仮想化も構想しているという。

 「今回のAzure導入を通じて、Azureにはもっと多彩な機能が充実していることを知りました。これだけ機能がそろっているのであれば、院内のさまざまなシステムを、手軽かつ安価にクラウドに移行できると思います。例えば仮想マシンを使って院内システムを仮想化し、ICT資産をスリム化することも考えられます」(高野氏)

 日本には、クラウド導入要件の1つとして「海外のデータセンターにデータを預けるのは、漠然としたセキュリティリスク、不安を感じる」とする企業が多い。国内の規正などで、国内にデータを保管することがクラウド利用の要件とする金融や官公庁、自治体、医療機関などもある。パブリッククラウドの導入において医療機関による実例は、今クラウドの導入に慎重な企業にも参考になるはずだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ