「渋滞緩和」に効果アリ──中国・吉林市の実証実験に見えた「明るい未来」(1/2 ページ)

「渋滞」が近い将来なくなるかもしれない。そう期待させる実証実験が中国・吉林市で行われた。NTTデータの「渋滞予測・信号制御シミュレーション」技術により、「渋滞緩和効果が確認できた」ようだ

» 2015年02月18日 17時48分 公開
[岩城俊介,ITmedia]

 都市や地域の生活基盤全体を最適化し、より利便性の高い社会=スマートシティを実現する取り組みが世界各国で進んでいる。スマートシティを構成する要素の1つとして次世代の交通システムを担う、「渋滞緩和」のための制度やシステムの研究や事例が実を結びはじめている。

photo 渋滞は大きな国民的課題。その緩和や解消に向け、さまざまな取り組みが各地でなされている

 渋滞はドライバーの操作、交差点や信号、路線減少や合流、路面状況、坂道、工事や事故、季節や曜日、時間帯などいくつもの要因が複雑に重なって発生する。国土交通省の調査資料(国土交通省『効果的な渋滞対策の推進』)によると、渋滞による全国の経済損失は年間約12兆円に上り、1人あたり年間30時間の時間損失を生むという。渋滞が経済や環境汚染、そして人の社会生活に影響を及ぼすのは自身の体験などからもご存じの通りだ。

 人の生活をより豊かにするスマートシティの実現に向け、この課題をITでどう解決するか。「渋滞」は近い将来なくなるかもしれない──。そう期待させる実証実験が中国・吉林市で行われた。NTTデータの「渋滞予測・信号制御シミュレーション」技術により、「渋滞緩和効果が確認できた」という。

経緯と課題:渋滞緩和のカギは、信号の適切な制御とその方法

 中華人民共和国の北部に位置する吉林省・吉林市。省都の長春市に次ぐ第二の都市として、人口約450万人(中心部約200万人規模)を擁する。市内中心部の交通渋滞や、それにともなうバスの運行の遅れなどを社会課題としており、プローブ情報によるバスの運行管理システムや交通監視カメラを通じた交通モニタリングシステムといったITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)など、より進んだ交通管理と管制の実現を目指すスマートシティ計画を他都市に先駆けて推進している。

photo 吉林市内実証エリア付近での渋滞の様子(出典:NTTデータ)

 NTTデータは2014年11月10日より1カ月間、吉林市と現地法人の吉林市伯瑞信息技术と協力し、現地で同社が開発を進める「渋滞予測・信号制御シミュレーション」を用いたITSの実証実験を実施した。「実際の交通環境に適用」する実証実験としては初の取り組みだという。

 今回の実証試験の目的とする「渋滞の緩和」策としては、日々刻々と変動する交通量を勘案し、信号の制御を適切に行うことが有効な手段の1つだ。ただ、信号制御の変更によって万一渋滞が発生した場合に市民生活へ大きな影響を与えてしまうことから、実環境への適用は、信号制御の設定を変更したことによるリスクを懸念する声があった。また、信号を制御する信号パラメータ(青→黄→赤→青の一連の長さを決める間隔設定など)が多岐に渡るため、最適なパラメータを選択することも困難だった。

photo 渋滞予測・信号制御シミュレーションの概要
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