「渋滞緩和」に効果アリ──中国・吉林市の実証実験に見えた「明るい未来」(2/2 ページ)

» 2015年02月18日 17時48分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
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対策と方法:交通シミュレーションで渋滞状況を事前評価し、適切な信号設定を反映

 信号の制御に関わるこれらの課題に対し、NTTデータはビッグデータを活用する並列分散処理技術に基づいた大規模交通シミュレーションの技術を導入。交通シミュレーションで渋滞緩和の効果を事前評価することで信号設定変更のリスクを下げ、シミュレーション上で信号パラメータの候補を複数回試行することで最適な信号設定を選択する方法を取り入れ、理解を得た。

 実証実験は、車載のIoT端末を通じて収集したバス約200台、8路線のプローブ情報と道路、交通量調査の統計情報を組み合わせて展開。シミュレーションから渋滞緩和につながると導かれた最適な信号パラメータを生成し、吉林市中心部の6カ所の交差点、計60機の信号機へ即座に反映する。渋滞緩和とバス運行時間の改善効果を最適化前後で比較し、評価した。

photo 交通シミュレーションで最適化した信号パラメータを生成し、信号機へ反映する(出典:NTTデータ)
photo 実証実験の内容

効果と成果:バス運行時間が最大27%改善、信号制御で交通渋滞の緩和が確認

 実験の結果、バスの運行時間は最大27%(平均7%)、交差点周辺の交通状況は平均プラス時速2キロメートルほどの改善が見られた。

photo バスの運行時間が大きく改善
photo 交差点でも交通がスムーズに流れるようになった

 それぞれ交差点間の連動や青信号が点灯している時間の長さを改善したことが有効となり、交差点周辺の交通が実験前よりスムーズに流れ流要になった。交通シミュレーション技術によって、交通渋滞が緩和される効果を確認できた。

 顕著な改善効果が得られたことで、吉林市は今回の実験で行った信号制御の設定を継続して利用を決めた。今後、実証エリアの拡大や、タクシーGPSなどシミュレーションのための情報源を増やすなどの施策も取り入れ、吉林市全体での渋滞緩和実現が期待されているという。

 NTTデータは実証実験の成果をもとにさらなる検証を進め、さらに他都市および国内での実証実験を進めていく計画だ。プローブ情報を収集する技術を高め、プローブ情報が不完全な場合にも対応できるカメラ動画の分析やセンシングデータを組み合わせる技術など、分析のための情報源をいかに効率的に集め、そして交通状況をより正確に再現する技術の開発に取り組む。この信号制御最適化ソリューションをベースにしたシステム構築により、2020年度末までに国内外で100億円の売上創出を目指す。

photo NTTデータ技術開発本部の米森氏

 「数値だけでなく、実際にバスが早く来るようになったと具体的に実感いただいた。速度改善は数値だけ見るとそれほどではないと思うかもしれないが、実際の現場は、渋滞=警察官が出動して手旗信号での交通整理を要するほど過酷。詰まって立ちゆかなくなる場面が減った、結果として出動回数が劇的に減ったことにも大きな効果を実感していただいた。改めて渋滞は、生活だけでなく経済や環境、社会インフラ全般に影響するマイナスな事象。今後、2020年のオリンピック・パラリンピック東京開催や世界各国で導入検討が進むスマートシティ関連プロジェクトへの本技術の展開を図り、信号制御最適化ソリューションの実用化を目指す」(NTTデータ 技術開発本部サービスイノベーションセンタシニア・エキスパートの米森力氏)


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