今回のハッカソンで提供した、試合中のワンシーンを検索できる「パ・リーグ イノベーション API」は富士通研究所が持つ映像処理技術を応用したものだ。パ・リーグTVではこの技術を使い、見たい選手と打席結果から該当シーンを探して視聴できるサービス「対戦検索」の試験提供を2015年4月に行っていた。
試合映像の撮影構図の切り替わりなどから投球シーンの始まりを自動で認識し、画面上のカウント表示板からストライクやボールといった投球結果を判定する。打席結果(ホームランや三振など)の認識も同様だ。試合、選手、結果ごとにプレイシーンをきめ細かく分類し、選手の情報や打席結果などの関連データを自動連携させることで、ハイライトの映像を検索、視聴できる。
対戦検索の開発は、野球ファンの“好きな選手の好きなシーンだけ見たい”というニーズから始まったという。「PLMの調査から、打席ごと1球ごとというシーン検索のニーズがあることを根岸さんから聞き、富士通の映像処理技術が生かせるのではないかと思いました。野球のプレーは必ず投球から始まるので、シーンごとの解析や分類をしやすいのがポイントです」(富士通イノベーティブソリューション事業本部情報統合システム事業部 小口淳氏)
その後、研究や試験を重ねて野球のシーンに特化したアルゴリズムを開発。タグ情報を作り、シーンごとにメタデータを自動で入力するのがポイントだ。アメリカにも似たサービスがあるものの、メタデータの入力は手動で行っているという。大幅なコストカットなどにつながるこの技術で特許も7件出せたそうだ。
「これまでスポーツの試合を見ようとすると、動画の1ファイルを先頭から見るというのが通常の視聴スタイルでした。しかし、野球の試合は平均して3時間と他のスポーツより長く、1試合全てを見るのは時間的にも簡単なことではありません。ファイルベースの映像であれば、シークバーを動かすしかありませんでしたが、シーンごとに扱えるようになれば、新たな視聴スタイルやサービスが生まれるでしょう」(小口氏)
「API公開で何かできるかもしれない」とチャレンジしたハッカソンも成功を収め、対戦検索の本格的なサービス開始も2015年7月に控えている。富士通とパ・リーグ、球界とIT業界の“コラボ”が新たな野球人気の起爆剤となる日は近いかもしれない。
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