ICTによる価値創造というテーマで、遠藤氏がAIとともに強調したのが「IoT(Internet of Things)」だ。特に遠藤氏が注目しているのは、サイバー世界と現実世界がつながることによるデータ収集方法の変化だ。
「IoTによってプロアクティブ、つまり受動的ではなく率先したデータ収集が可能になる。このスイッチをどれくらいの力で押すかなど、自らが欲しいと思ったデータを得るように動くことができ、そのデータをもとにシミュレーションが行える」(遠藤氏)
また、全てのモノがリアルタイムにつながることにより、あらゆるモノが個人の嗜好に対応する“超カスタマイズ社会”になると遠藤氏は考えているという。「部品の供給や生産ライン、物流やマーケティング。あらゆるモノがデータでつながり全体最適を追求すれば、個人の要求に全て応えることも可能になるはずだ」(遠藤氏)
こうしたIoTシステムを支える基盤として、同社が力を入れているのがSDNとスーパーコンピュータだ。各デバイスから集めたデータをリアルタイムでクラウドに送り、分析に回そうとすれば、必然的にネットワークのリソースや分析に必要なコンピューティングリソースが不足しがちになる。
近年は、センサーに近い位置(エッジ:端)でセンサーデータを分析に適したデータに変換処理し、クラウドへと送る「エッジコンピューティング」というアプローチも出てきており、SDNや並列分散処理に向くベクトル型スーパーコンピュータも含めたSDI(Software Defined Infrastructure)を構築することが、こうした課題を解決するカギになる遠藤氏は語った。
とはいえ、こうした先端技術が生きるのもセキュリティが担保されていればこそ。「サイバー空間で価値を創造する以上、サイバー空間の安全が担保されていないと価値が半減してしまう」と遠藤氏は話す。
NECは認証技術やデータ暗号化といったソリューションを展開しているが、近年はSDNを活用し、サイバー攻撃に対する防御を行う仕組みに注力している。不正通信やマルウェアを検知した段階で、業務サーバへのネットワークを遮断するというアプローチだ。標的型サイバー攻撃対策を提供する「サイバーセキュリティ・ファクトリー」も好調で、1年間で100社と契約を結んでいるという。
「AI(人工知能)」「IoT」「セキュリティ」。オリンピックが開催される2020年までに、これらの技術がどれだけ私たちの生活に入り込んでいるか。トレンドに合わせて言葉は変われど、遠藤氏の主張は一貫している。「より明るい未来のため、これからも皆さんとディスカッションを重ねながら、社会に貢献する方法を模索していく」
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