オバマ大統領、Apple対FBIについて間接的に「絶対主義は危険」と警告

米大統領として初めてSXSWに登壇したバラク・オバマ氏が、Apple対FBIのロック解除問題についての質問に、「絶対的な暗号化かビッグ・ブラザーの世界か」と主張することはかえって人権を危険にさらす結果につながるという考えを述べた。

» 2016年03月12日 18時15分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 バラク・オバマ米大統領は3月11日(現地時間)、米テキサス州オースティンで開催の「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」の基調講演に登壇し、地元紙Texas Tribuneのエヴァン・スミス編集長を相手にテクノロジーと政治、教育などについて語った。

 obama 1 バラク・オバマ大統領(右)とTexas Tribuneのエヴァン・スミス編集長

 最後にスミス氏が「AppleとFBIの状況について質問したい」としてプライバシーとセキュリティのバランスについてどう思うかと質問すると、オバマ氏は個別のケースについての意見は言えないと前置きし、「政府がすべての人々のiPhoneやスマートフォンの中身を強制的に捜査できないようにしたい非常に現実的な理由があると考える。(中略)テロリストやハッカーからのサイバー攻撃から金融システムや交通管制システムを守るためにも強力な暗号化が求められている。暗号化にはそうした2つの重要な価値がある。問題なのは、誰もアクセスできない完全な暗号化は可能なのか、そうだとすれば、児童ポルノ犯罪者やテロリストをどうやって逮捕すればいいのか、ということだ。(中略)暗号化された情報にアクセスするための何らかの手段を残しておくという妥協が必要だ」と語った。

 obama 2

 同氏はそうした手段が悪用される危険性も認識しているとしながらも「暗号化支持陣営は、1台の端末用の解除ツールは他の端末にも使われてしまうと主張している。私はソフトウェアエンジニアではない(からよくわからない)が、それは技術的には本当なのだろう。だが、誇張されているのではないかと思う」とし、「私の結論は、この問題について、あなた達(暗号化支持陣営)は絶対主義的な視点を持つべきではないということだ。(中略)テクノロジーコミュニティーの人々が『われわれが誰にも破れない完璧な暗号化を持つか、1984の世界が到来するかだ』と主張するならば、今後もし最悪の事態が起きた際、この問題に関する政策は急を要する中で熟慮されずに議会を通り、そうなればわれわれの人権が危険にさらされることになる」と警告した。

 AppleがFBIへのiPhoneのロック解除ツール提供を拒否した件に関する法廷審問は3月22日に行われる。

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