2000人超のアカウント管理、もう限界 DeNA“システム自動化”の効果は(1/2 ページ)

ベンチャーから出発し、今や球団経営にまで事業を拡大したDeNA。社員2400人分のアカウント管理に忙殺されていた情シスは、アカウント生成の自動化に踏み切った。

» 2016年06月23日 12時00分 公開
[後藤祥子ITmedia]
Photo 経営企画本部 IT戦略部 グローバルオペレーショングループの山本優三氏

 ゲーム、Eコマース、ヘルスケア、キュレーション、遺伝子検査からオートモーティブ、球団経営まで――。DeNAは幅広い事業展開で知られる企業だ。時代のニーズをくんだサービスを次々と展開して事業を拡大。創業17年目にして、従業員2000人超の企業へと成長を遂げた。

 そんな同社は、急成長した企業ならではの複雑化するアカウント管理や、グローバル化といったシステム面の課題に直面。クラウドの活用で課題の解決を図ったという。

 DeNAの情報システム部門は、どんなクラウドをどのように使ってシステム面の課題を解決したのか――。DeNA 経営企画本部 IT戦略部 グローバルオペレーショングループの山本優三氏が、kintone hiveの講演で取り組みを紹介した。

グローバル展開でシステム刷新が急務に

 山本氏によれば、DeNAに転機が訪れたのは2011年のこと。事業が急拡大し、海外に子会社を持つようになったことから、情報システム基盤を急ピッチで整備する必要に迫られたという。「圧倒的なスピード感で事業が展開していく中、オンプレミスでは柔軟なシステム開発が困難になったことから、クラウドに移行するという方針になったのです」(山本氏)

 システムのクラウド化を進める中、同社がPaaSの導入にあたって重視したポイントは3つあったという。1つは分かりやすいUIだ。国内外のスタッフが利用するため、誰にでも分かりやすいUIであることはもちろんのこと、必要に応じて画面の設定を自分たちでカスタマイズできるような柔軟性も必要だった。

 2つ目は多言語対応。一画面に複数の言語が併記されるような複雑な画面になるのは避けたかったため、利用者が設定した言語に応じてメニューが自動で切り替わるサービスを求めていた。

 3つ目はAPI連携だ。「ユーザーや組織、システム自体のメンテナンスを効率よく行うためには、外部からデータにアクセスして自動でメンテナンスを行う必要があると考えていました。そのため、外部システムとデータ連携するためのAPIが提供されていなければならないと感じていました」(山本氏)

 DeNAでは、これらの条件を満たしていたサイボウズのkintoneを2012年に導入。IT部門が使い込んでノウハウを蓄積した後、2014年に全世界の拠点ごとに異なっていたワークフローツールをkintoneで統一した。今では事業部サイドが日々の業務アプリとして活用するようになり、2016年の時点で150ものアプリが稼働しているという。

数千人分×複数システムのアカウント、手動管理が限界に

 今や従業員規模が2000人を超えるレベルになったDeNAには、もう一つ大きな課題があった。アカウント管理の複雑化だ。千人単位のスタッフが複数のシステムを利用することから、アカウントの管理は困難を極めたという。

 「DeNAにはさまざまな業務があり、その業務を効率化するためにいろいろなシステムを導入します。情シスは、多種多様な業務アプリの管理を行うと共に、複数システムのアカウントを従業員の人数分、管理しなければなりません。それは膨大な数に上ります」(山本氏)

 加えて、DeNAの企業文化がアカウント管理をさらに難しいものにしていた。同社は、新たな価値を持つサービスを常識にとらわれることなく、スピード感をもって提供することを目指していると山本氏。「それを体現するには柔軟な人材配置が求められるため、一般的な企業に比べて異動や入社が多いんです。ほぼ毎月、入社する人がおり、雇用形態によっては毎週のように入社の業務が発生します」(同)

 その上、人事や採用担当現場からは、「内定してから入社するまでの期間をより短くしてほしい」という要望が寄せられていた。

 つまりDeNAの情シスには、「毎週のように、内定が決まった社員に対して、タイムリーにもれなく業務システムのアカウントを発行し、退職する社員のアカウントは情報漏えいを避けるため、すぐにアクセスできないようにする」ことが求められていたわけだ。

 「頻度が高く工数が多い作業を、全て手動で正確にさばくのは限界がある」――。そう考えたDeNAの情シスが検討を始めたのが、アカウント管理システムの自動化だった。

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