ここ数年、脚光を浴びているウェアラブルデバイスについて、その歴史を振り返りつつ、期待される展開や留意点などをまとめます。
カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。
モバイルデバイスが「持ち歩くデバイス」ならば、ウェアラブルデバイスは「身に付けるデバイス」で、1980年代には研究がスタートしていました。当時はウェアラブルといっても、巨大なパソコンを背負うような無理やりなものでしたが、1990年代には腰にぶら下げられる程度にまで小型化されました。これを使ってマニュアルや設計図を保存し、作業現場で利用する使い方も模索されましたが、当時はそれ以上の発展は見られず、静かにブームは去ってしまったのです。
ウェアラブルがここ数年、再び脚光を浴びているようになったのは、その当時の問題点を解決するめどが立ったからです。
技術革新によって小型軽量化が可能になり、バッテリーの持続時間も延びました。また、BluetoothやNFC(Near Feld Connection)といった低消費電力の近接通信技術が使えるようになり、普段持ち歩くスマートフォンを介してインターネットに接続できるようになりました。
さらには、クラウドと一体で使うことで、単体では実現できない膨大な処理能力と記憶容量を手に入れることができました。また、タッチパネルや音声入力、ジェスチャ操作なども実用化され、小型であってもデータ入力や操作が確実にできるようになったことも普及に弾みをつけています。
身に付けることで、人とデバイスとの距離は限りなくゼロになります。これは、モバイルデバイスではできなかったことです。ここに新たな用途を生み出す可能性が生まれてきたのです。
身に付けるデバイスといっても、人はそれほど多くのものを身に付けているわけではありません。一般的には、衣服、眼鏡、時計くらいで、ウェアラブルデバイスもこれらを代替するものが大半です。
変わったところでは、靴に取り付けてランニングの距離やスピードを、ゴルフクラブに取り付けてスイングの状態を、テニスラケットのグリップエンドに取り付けてスイングや身体の動きを取得するといったアクティビティ・ラッカーも、広い意味ではウェアラブルデバイスといえるかもしれません。これらのデータは、スマートフォンのアプリやその先につながるクラウドサービスに送られ、さまざまな機能を提供します。
現在は、スマートフォンに着信した電話やメールを音や振動で通知したり、音声認識を使って簡単なメッセージを返信したりする機能が主流ですが、それにとどまらない大きな可能性を秘めています。
特に注目されている使い方が、生体情報の利用です。脈拍や血圧、発汗量などを収集して健康管理や予防医療に役立てる取り組みが始まっています。Googleは、コンタクトレンズ型の血糖値センサーを開発し、コンタクトレンズメーカーと一緒になってその実用化を進めています。
一方で、新しいデバイスゆえの問題点も指摘されています。カメラ機能を持った眼鏡型デバイスをかけた人がプライバシーへの配慮からレストランへの入店を断られるといったことに加え、生体情報といったセンシティブな情報をどう取り扱うかも気になるところです。
新しいデバイスであるがゆえのルールの整備やコンセンサスの醸成は、今後の課題となるでしょう。
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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