コロンビアのコメ栽培に日本の農業IoTを――「e-kakashi」実証実験へ

コロンビアの国際研究機関が、日本の農業IoTソリューション「e-kakashi」の実証実験を開始。ソフトバンクグループ傘下のPSソリューションズ、日立製作所がプロジェクトに参画する。

» 2017年07月26日 13時30分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 国際熱帯農業センター(CIAT)は、ソフトバンクグループ傘下のPSソリューションズ、日立製作所とともに、国際競争力のある持続可能な農業の実現に向けた国際共同研究プロジェクトの一環として、可視化した農業データから栽培手法や知見を共有する農業IoTソリューション「e-kakashi」の実証実験をコロンビアで開始した。

 PSソリューションズが開発、販売するe-kakashiは、圃場(ほじょう)から環境情報や作物の生育情報を収集し、クラウドで分析して分かりやすく可視化するソリューション。分析結果は、作業指示やアラート通知をタイムラインで表示する栽培ナビゲーション「ekナビ」として提供され、農業における意思決定、リスクヘッジなどに利用できる。

 気象データなどをリアルタイムで共有するセンサーは、すでにコロンビアでも導入されているが、e-kakashiのようにクラウドでのデータ分析や栽培方法をナビゲートして提供するシステムはまだなく、コロンビアの農業が抱える課題解決への貢献が期待されるという。

 現在、コロンビアでは1人あたりのコメの年間消費量が40kgを超え、1年生作物で同国最大の栽培面積を占める重要作物となっている。コメの需要が高まる一方、気候変動などの影響、かんがい水や施肥成分の利用効率が低いことにより生産コストは高く、作付け面積や収量が伸び悩み、コメ消費の自給率に課題を抱えている。

 また、コロンビアでは、2012年に発効された米国との自由貿易協定(FTA)により、現在80%の関税が段階的に撤廃され、2030年には米国産コメの完全輸入自由化が始まる。輸入米増加に伴う国内でのコメ生産の縮小を防ぎ、国際競争力のある持続可能な農業を確立する必要があるという。

 こうした背景から、CIATとPSソリューションズは、日本の農業IoT技術を活用した精密な栽培管理による生産性の向上を実現するため、現地での実証実験を開始。日立製作所は、PSソリューションズの開発パートナーとして、e-kakashiのコロンビアへの導入に際して、農業フィールドに適したIoTデバイスからクラウドまで、センサーデータを収集・蓄積・管理する環境を総合的に支援している。

Photo CIAT試験ほ場に設置された「e-kakashi」

 CIATは、今回の実証実験に伴い、e-kakashiを海外で初めてコロンビアに導入し、かんがいや施肥、作業管理の低減や精密な栽培管理のためのモニタリングを開始。実証実験では、主に新品種の開発に取り組み、プロジェクトを通じて、開発された新品種の導入と省資源型稲作の実現による生産性の向上を目指す。

 将来的には、コロンビアの栽培環境が異なる地方(カリ地方、イバゲ地方、サルダーニャ地方など)でも信頼できるデータの収集とアプリケーションの開発などを進めることで、投資を促し、農業のIoT化を促進させることを目標にしている。これらの取り組みを通して、プロジェクトの目標である「省資源稲作の開発および定着」につなげたい考えだ。

 今後、同実証実験の途中経過について、8月14日〜17日(現地時間)にCIAT内で行われるラテンアメリカ水稲基金(FLAR)技術会議で発表する予定とのこと。

 CIAT、PSソリューションズ、日立製作所は、環太平洋連携協定(TPP)や経済連携協定(EPA)などでも農業のグローバル化が求められている中、精緻なデータの集積と分析による科学的な根拠をもって栽培の効率化や高品質化を図る手法は欠かせないものになっていくと考え、今後も継続的に研究開発を進め、農業IoTの発展に取り組んでいくとしている。

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