農業と水環境分野で高度なIT活用を クボタとNTTが実証実験

NTTグループのICTサービスやAI関連技術「corevo」を活用し、実証実験を行う。

» 2017年10月11日 11時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 クボタと日本電信電話(NTT)が、農業と水環境分野で高度なIT活用を推進するためのインフラ提供を目指した実証実験を開始した。

 これまでに両社は、水環境分野で、IoTサービス「KSIS(クボタスマートインフラストラクチャシステム)」を用いた下水処理場などのシステム点検と省人化を目的としたLPWA無線通信、気象情報を活用した河川や下水道の状況モニタリング、騒音環境下でも点検作業時の記録や指示事項の音声入力が可能なマイクや音声認識技術などの実証実験を行ってきた。

 今回、新たな取り組みとして、農業分野では、クボタの営農支援システム「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」に、農業に必要不可欠な気象予報を提供する「my天気予報」機能を追加し、2017年年6月からサービスを開始した。NTTグループの気象会社ハレックスが提供する1Km単位、1日48回更新の詳細な気象情報を基に、降雨量や風向、風速などを加味した緻密な作業指示を行い、作業の効率化を目指すとしている。

 また、稲作に必要な水位管理では、NTTグループが提供する「水田センサ」を使った実証実験を千葉県柏市の圃場で2017年8月から開始。NTTグループの低消費電力なLPWAネットワークを活用し、スマートフォンなどで遠隔に水位と水温のデータを把握できる「水田センサクラウドシステム」を実証。稲作地帯という広範囲エリアにおける水田見回り作業の削減や省力化の可能性を検証する。

 クボタは、この実証実験の結果に基づき、水田センサで収集した情報をKSASに取り込み、圃場の「見える化」を進める。また、同社の農業機械販売網にて2018年をめどに水田センサの販売を開始する予定としている。

ALTALT 左: 「水田センサ」 / 右: 「KSAS」での水田センサ収集データ連携のイメージ

 水環境分野では、民間の排水処理施設に設置されている液中膜(膜の微細孔を利用して活性汚泥と処理水とを分離するための膜ろ過装置)の監視について、監視の効率化と精度向上に向けて、2017年8月から共同研究を開始した。NTT研究所が保有するAI技術corevoの異常検知技術と、オープンソースの機械学習処理基盤「Jubatus」を用いて、従来は人手をかけて監視していた液中膜の圧力や運転稼働情報などのデータ解析を自動化する。

 このデータ解析技術は早期商用化を目指しており、実稼働データによる実証試験も実施する。

Photo Jubatusを用いた液中膜監視の省力化イメージ

 現在、農業分野では、農業所得や農業経営体の減少、高齢化や後継者不足が課題であり、省力化やコスト低減、品質管理技術の確立と普及に伴い、ロボットやICTを活用したスマート農業の実現が期待されている。

 水環境分野では、少子高齢化時代を迎えた昨今、大幅な改築や更新が進まず、老朽化が進むインフラ設備に対し、極力人手をかけない効率的で安全なオペレーションが求められている。

 このような状況の中、クボタとNTTグループは、2016年6月にICT活用による農業の競争力強化と快適な生活環境の実現を目指し、「農業・水・環境インフラ分野におけるICTイノベーション創出に向けた連携協定」を締結し、農家や自治体などの課題を解決するサービスの検討を進めてきたという。

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