ITは“お役所事情”を変えられるのか? RPA導入で茨城県庁が明かす「今の課題」と「必要な変化」茨城県、RPA導入への道【後編】(2/4 ページ)

» 2019年03月28日 07時00分 公開
[高木理紗ITmedia]

 その内容を具体的に見てみると、例えば「予算令達登録(教育庁財務課)」は、121校ある県立学校に毎年配分される「光熱費」「通信費」といった予算の内容を、財務会計システムに入力していく作業。通常は職員1人が1週間をかけていたというが、仮データを使って自動化した結果、処理時間は2〜3時間に短縮し、職員の実稼働時間は10分程度で済むことが分かったという。

photo 茨城県庁で行われたRPAの実証実験で、財務会計システムに各県立高校への予算配分額を自動入力していく際の様子(資料提供:茨城県)

 また、「検収資料確認(保健福祉部厚生総務課)」とは、県内で利用者が多い国民健康保険の状況を国に報告するため、市町村から上がってきたデータを報告用のシステムに入力した後、入力結果に間違いがないかチェックするもの。従来は、担当の職員8人が入力結果を紙に印刷し、間違いがないか目で突合して確認していた。実証実験の際にシステムからcsvでデータを出力し、元のデータと突合する仕組みを作ったところ、8割以上の時間を削減できたという。

photo RPAの実証実験で、市町村から提出された報告書データと、県から国へ報告するシステムから出力されたCSVデータを突合し、結果をexcelシートに出力している様子(資料提供:茨城県)

 ICT戦略チームのリーダーを務める菊池睦弥氏は「もともとExcelなどで扱っていたデータを、せっかく電子化しているのにもう一度打ち直して基幹システムに入れていた、という情けないところを、システム連携が容易なRPAですぐに効率化できるところは非常にありがたい」と語る。

 実証実験の結果、県庁では、対象業務にこれまで使っていた作業時間を、平均で86.2%削減。今回の4業務を、県庁では今後本格的に自動化したいとしている。実証実験の成功を受け、茨城県では2019年2月、次年度である2019年度20業務を自動化する予算として6240万円の投資を決定した。

photo 2019年1月30日に都内で開かれたイベントで講演する茨城県の大井川和彦知事

 2019年1月30日に都内で開かれたイベントで、大井川知事は「執行部には、(次年度予算として)2倍(8業務分)はどうかと言われたが、自分は『いや、5倍(20業務分)だ』と答えた。成功すると確信できたら一気にやるというのが、本当の効果を出す上では重要かなと思っている」と話していた。今回の茨城県の予算決定は、この意向を全面的に取り入れた結果のようにもみえる。

 ただし、だからといって、茨城県庁では“これから一気に業務を自動化していく”というわけではないようだ。むしろ、ICT戦略チームでは、PCの中で管理する「クライアント型」のRPAを小規模な業務に確実な形で導入していく一方、「ロボットの作成や運用、メンテナンスといった作業を誰がどこまで負担するか」「いかに現場に負担をかけず、現実的な運用体制を探るか」といった点を見極める方向に重きを置いている。

 同チームの中でグループリーダーを務める戸澤雅彦氏は、「将来的に効率化が進むのであれば、サーバ型のRPAも検討できるとは思います。ただ、そこに到達するまでには、仕事の進め方自体を変えなければならないでしょう」と語る。

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