AWS、MS、Google――群雄割拠の“クラウド戦国時代”を制するのは誰だ?ベテラン記者が裏側を読み解く(4/4 ページ)

» 2019年07月16日 07時00分 公開
[谷川耕一ITmedia]
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Google Cloud Platformのトーマス・キュリアンCEO

 ところが、桁違いの買収額でGoogleによるLookerの買収劇をかすませたのが、Salesforce.comが157億ドルもの大金を投じて行ったTableau Software(以下、Tableau)の統合だ。Salesforce.comは今、「Salesforce Einstein(以下、Einsterin)」と呼ぶAIに力を入れている。2018年はインテグレーションサービスを手掛ける「MuleSoft」を65億ドルほどで買収し、EinsteinにSalesforce以外にあるデータを容易に取り込めるようにした。

 とはいえ、強力な分析用データベースもなしに、さまざまなデータを全てSalesforceに集めるのは、あまり現実的ではない。そこでBIやデータ分析の分野で実績を持つTableauを統合し、ビッグデータ分析を容易にしようとしているのだろう。

 相次いでデータ活用のソリューションが買収された理由は、「膨大なデータをAIなどで分析し、知見を提供する能力」が、今後クラウドの価値につながるからだ。これまでは、「安価に柔軟なインフラが提供できる点」が、クラウドの評価ポイントだった。今後はさまざまな場所で発生するデータから迅速に知見を提供し、デジタル変革につなげられるかどうかが、クラウド市場でも価値になる。

価値の移行は、クラウドインフラにも変化をもたらす

 データから知見を提供するインフラの在り方も、変わりつつある。以前は、安価なパブリッククラウドのインフラにビッグデータを集め、分析できるようにする構成が最適と考えられてきた。しかし、膨大なデータを1カ所に集めるのは得策ではない。データを移動させるには手間とコストがかかり、それらはデータ量が多くなればなるほど膨らむからだ。

 そのため今後は、なるべくデータが発生した場所の近くで処理をする――つまり、分析機能やアプリケーションが、データ側に近づくとの考え方が出てきている。データを発生場所から無理に動かさないという発想は、まさにエッジコンピューティングやハイブリッドクラウド、マルチクラウドに通じる。こうした動きは、クラウド市場の様子に変化をもたらしていくだろう。

 未来のハイブリッドクラウド、マルチクラウドの世界で覇権を取れるのは、必ずしも現時点で好調なベンダーではないかもしれない。もちろん、今リーダーポジションにあるベンダーも、変化を経験することで、新たなクラウド市場での高みを目指していくことは間違いない。彼らの成長と挑戦に、今後も注目だ。

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