新たな創業へ――NTT Comが打ち出したDXプラットフォーム事業戦略Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2019年10月07日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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NTT Comならではのプラットフォームビジネスへ

 SDPFのコンセプトは、図1に示すように、4つの「ONE」からなるキーワードにひも付けられている。この中で「ONE POLICY」が少々分かりづらいので捕捉しておくと、「セキュアなデータ通信経路の確保、データ保管場所の指定、データの匿名化などによって、一貫したポリシーで運用でき、安心安全なデータ利活用を実現できる」ことである。

Photo 図1 「Smart Data Platform」における4つのコンセプト

 図2がSDPFの全体像である。その特徴としては、次の3つが挙げられる。

Photo 図2 SDPFの全体像

 1つ目は、必要な機能を柔軟に組み合わせてワンストップに利用できること。これにより、企業のIT部門や事業部門は、すぐにデータ利活用環境の構築、保守業務を効率化し、企業のDX実現へのリソースシフトが可能となる。

 2つ目は、データ利活用プロセス全体で安心安全なデータ利活用が可能なこと。これにより、企業におけるIT部門のセキュリティ管理稼働やデータ漏えいリスクを軽減する。

 3つ目は、多様な環境に点在するデータの統合、連携が可能なこと。NTT Comが提供するAIのアプリケーションに加え、他社が提供するデータ利活用アプリケーションもSDPFと連携でき、企業の課題やニーズに応じたさまざまな領域でのデータ利活用を可能にする。

 こうした特徴について説明した庄司氏は、講演の最後に、「SDPFの提供により、当社は『DX Enabler(DXイネーブラー)』としてデータを利活用したDXを推進し、社会的課題を解決してSmart Worldの実現にまい進したい」と力を込めた。ちなみに、「DX Enabler」というキャッチフレーズは、同社が商標登録しているので、今後さまざまなところで見聞きすることになりそうだ。

Photo 図3 「DX Enabler」をキャッチフレーズに

 以上が、庄司氏が講演で語ったNTT Comの新たな創業に向けたDX事業戦略のエッセンスだが、筆者の頭には1つの疑問が浮かんできた。端的にいうと、「SDPFによるビジネスは、システムインテグレーター(SIer)のビジネスとかなり重なってくるのではないか」ということだ。同社にとってはこれまでのICTソリューション同様、DX事業においてもSIerは大事なパートナーのはずだ。この点について、講演後の囲み取材で庄司氏に聞いてみると、次のような回答が返ってきた。

 「私の理解では、SIerはお客さまに対してプラットフォームというよりカスタマイズを提供するイメージが強い。クラウドの形態でいえば、当社がパブリッククラウドならば、SIerはプライベートクラウドといった具合だ。とはいえ、今後は重なってくる領域も出てくるだろうが、お客さまから見れば、うまく使い分けていただけるのではないかと考えている」

 さらに、こう続けた。

 「SDPFは、通信事業者が目指すDX事業のプラットフォームとして練り上げたもので、今後の当社の成長エンジンに仕立て上げていきたい。多くのお客さまに利用していただくことにより、当社ならではのプラットフォームビジネスを追求していきたい」

 SDPFはNTTグループにおけるビジネス機会になるとともに、SIerをはじめとしたパートナーとの協業が普及には不可欠だ。庄司氏が新たな創業に向けてどのような経営のかじ取りを見せるか、注目していきたい。

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