ただのアウトソーシングではない、情シスの“ステップアップ”にコミットするサービスを始めたIIJの思惑Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2020年07月20日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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SIerが提供する「クラウドジャーニー」の新たなシナリオに

 IIJのストラテジックITアウトソーシングにおいて注目すべき最大のポイントは、システムの保守運用など特定の役務を単純に代替するのではなく、情報システム部門の役割を全て引き受け、その業務品質を保証するというビジネスモデルにある。

 これにより、ITインフラに関わる業務から解放された情報システム部門は、IT人材を有効活用できるようになる。例えば、彼らをDXの推進やITを活用した新しい事業の創出など、本来強化すべきコア業務に投入できるようになる。この点は、ユーザーにとって最大のメリットである(図2)。

Photo 図2 企業内IT人材の注力領域(出典:IIJの資料。日本クイントとQuint Groupの許可のもと、両社の「ソーシング・ガバナンス・ファンデーションテキスト」より再作成したもの)

 例えば、KPIの1つとして前にも触れた継続的なITコスト削減については、ITインフラ環境の標準化をはじめ、利用するサービスや製品選定および調達の一元化、運用自動化によるシステム維持/運用のコストの最適化を、ユーザーと合意した比率で実施する。

 ここで注目したいのは「ITインフラの標準化」という表現だ。これは実質的にはクラウドサービスを採用することを指す。図1を見ると、「クラウド」も今回の新サービスの対象範囲となっている。これはどのような意図があるのか。

 IIJのストラテジックITアウトソーシング担当部門に聞いてみたところ、「今回のサービス(ストラテジックITアウトソーシング)では、インフラ運用の自動化を実現する仕組みを中心に業務全体の効率化を進めつつ、クラウドサービスへのリフト&シフトを促進するなど、お客さまのDX人材育成を支援する。クラウドサービスへのリフト&シフトを提供することで、戦略的アウトソーシングを一層拡充していくことを考えている。クラウドサービスへの移行については、当社が標準と定めた内容に基づいて、当社のサービスだけでなく、他社のサービスも組み合わせた柔軟なソリューションを提案していく」とのことだ。

 ちなみに、ITインフラにおけるクラウドサービスとして、IIJはパブリッククラウドとプライベートクラウドを融合させた「IIJ GIOインフラストラクチャーP2」を提供している。また「他社のサービス」とは「Amazon Web Services」や「Microsoft Azure」などのメガパブリッククラウドサービスを指す。IIJはかねて他社のクラウドサービスとのマルチクラウド利用に対し、統合管理も合わせて支援できるように注力している。

 こうしてみると、今回の新サービスを推進するIIJの思惑が見てとれる。それは、情報システム部門の業務を丸ごと請け負ってモダナイズし、クラウドサービスへの移行を促したいというものだ。IIJはネットワークサービスプロバイダーであるとともに、システムインテグレーター(SIer)の顔も持つ。そう考えると、今回の新サービスは、SIerがユーザーに提供する「クラウドジャーニー」の新たなシナリオともいえそうだ。

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