変わるSIerの役割 DXにどう取り組み、ユーザーにどんな価値を提供していくのかWeekly Memo(1/2 ページ)

これまで企業のシステム構築を手掛けてきたSIerにとって、DX事業をどう進めるかは重要課題だ。ユーザーにどんなDXの価値を提供できるのか。日鉄ソリューションズの取り組みから考察してみたい。

» 2020年10月12日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]

企業がDXの取り組みで直面する3つの難所とは

 「当社ならではのデジタルトランスフォーメーション(DX)の価値をお客さまに提供していきたい」――日鉄ソリューションズ(以下、NSSOL)の齋藤聡氏(執行役員 DX推進&ソリューション企画・コンサルティングセンター所長)は2020年10月7日、同社が開いたDX事業の取り組みに関するオンライン形式での記者説明会でこう強調した。

Photo 日鉄ソリューションズの齋藤聡氏

 これまで企業のシステム構築を手掛けてきたシステムインテグレーター(SIer)が、DXにどう取り組み、ユーザーにどんな価値を提供していくのか。これはIT業界の大きな課題であり、DX自体が産業構造をも大きく変える動きとして注目されている。大手SIerであるNSSOLの例を基に、SIerのDX事業について考察してみたい。

 まず、NSSOLにおけるDXの定義について、齋藤氏は「デジタル技術とデータを自在に駆使した『持続的』な業務、ビジネス変革」と説明した。「持続的」という言葉には「過去、現在、未来と継続して変革していく」との意図があるという。同社はSIerとして企業の基幹業務システムを担うケースが多いことから、持続的とはすなわち、それらを対象にした表現と受け取れる。これが、冒頭の発言の「当社ならではのDX」の対象とするところだ。

 顧客企業がDXに取り組んでいく上で、同氏は「DXで直面する3つの難所がある」という(図1)。

Photo 図1 企業がDXで直面する3つの難所(出典:NSSOL)

 1つ目は「個別最適を超えたインテグレーションによる変革」だ。組織の壁を越えて目的を共有、啓発し、バラバラな業務やデータをつなぐために多岐にわたる変革の統制が必要となる。

 2つ目は「更地に建てるのではない積み重ねてきた競争力の変革」だ。DXでは絶妙なバランスの上に成り立つ既存システムの何を変え、何を残し、何を捨てるかの判断が必要となる。例えば、レガシーシステムのモダナイゼーションがこれに当たる。

 3つ目は「単発で終わらない持続的な変革」だ。DX推進においては、変化し続ける事業環境に合わせて自らも変革し続けることが必要だ。

 そして同氏は「これら3つの難所をお客さまとともに乗り越えていくためには、私たちSIerも変革が必要だ」と述べ、「NSSOLはSIerから『X(エックス)インテグレーター』へと変革する」と宣言した。

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