必要ならビルの“役割”さえ作り変える 新常態のDX、鹿島が建設業界の外まで広げるビジョンは【特集】2021年、DXのビジョンは(1/2 ページ)

ビルや共用施設などの建設からスマートシティ事業まで、多彩なDXに取り組むのが鹿島建設だ。建設工程の自動化や建物のエネルギー消費の最適化などにデジタル技術で挑む同社の意図と、コロナ禍で経験したDX事業そのものの変化を聞いた。

» 2021年02月05日 07時00分 公開

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 経済産業省が東京証券取引所に上場している企業の中から、企業価値向上につながるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を選定したものが「DX銘柄」だ。鹿島建設は、建設業の中からDX銘柄2020に選定された。

 建設の過程だけでなく、ビルのメンテナンスやスマートシティといった事業にもDXを広げる同社は、どのような未来を見据えているのか。同社の情報システム部門で社内ITの構築などに長く携わり、現在は鹿島建設のデジタル戦略をリードする立場にある真下(ましも)英邦氏(デジタル推進室 室長)に話を聞いた(注)。

(注)2021年1月から現職。2020年12月に取材時の肩書は秘書室コーポレート企画室 ITソリューション部担当部長。

建設企業としての“役割”まで変えるDXの中身

鹿島建設の真下英邦氏(画像提供:鹿島建設)

――数年にわたってDXに取り組まれる立場にあると伺っています。現在の役割について教えていただけますか。

真下英邦氏(以下、真下氏) 私は鹿島建設グループ全体の中長期の事業戦略、つまりは10年、20年後にどういった会社になるべきかを考える部隊に所属しています。今、経営戦略の中では、経営の方向性を考えていく上でデジタルが極めて重要な要素です。ちょうど2021年度から始まる新しい中期経営計画の中で、デジタル戦略の重点をどこに置けばいいか、施策のポイントをどこに持っていくかなどをまとめているところです。

――鹿島建設にとって、DXに取り組む意義とは何でしょうか。

 デジタルというキーワードには今、2つの意味があると考えています。まずはAIや5G、データ活用といったデジタル技術が総じて進化している点があります。もう1つは、デジタル技術が進化したことで、世の中が大きくデジタル社会に変わっていることです。これまで人びとが生活してきた現実の空間だけではなく、デジタルな空間が新しく出来上がっています。今はリアルとデジタルの2つの空間を人々が行き来しながら生活するデジタル社会になっています。DXも、デジタル技術の進化とそれによる世の中の変化という2つの目線から捉えられると考えています。

 当社にとって、DXの意義は複数あります。今まで人を中心にやってきた建設が、デジタル化や機械化によって大きく変わろうとしています。例えば、IoTや画像処理技術の進化により、これまで人手でやっていた建設の施工(注)を自動化できるようになります。さらに人の感覚や経験に頼っていたものが、データに基づいて判断できるようになります。どのような工法や工程で進めれば良いかを、データに基づいて語れるようになります。

 これにより生産性も上がり、建設業が抱えている人手不足にも寄与できます。機械化により人手がいらなくなるだけでなく、建設現場にある苦しい作業から人を解放することもできます。これらが、デジタル技術の進化によるDXになります。

(注)建築物や工作物を、仕様や性能と併せて作り上げること

 もう一つの意義は、社会の変化に関するものです。

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