MSの「顧客の内製化」路線は、パートナーと並走する――クラウド戦略が示す新しい“協業”の形Microsoft Focus(1/2 ページ)

クラウドネイティブな開発を掲げるMSが、顧客支援で新たな戦略を打ち出した。そのキーワードは顧客企業による「内製化」と、パートナーによる支援を続ける「並走」だ。この2つをどう両立させるのか。新たな協業の形を聞いた。

» 2021年02月12日 07時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 日本マイクロソフトが「Microsoft Azure」(以下、Azure)の事業戦略において、ユーザー企業自らがアプリを開発する「内製化」と、パートナーがユーザー企業を支援する「並走」という2つのキーワードを打ち出した。相反する言葉のように聞こえるが、同社の狙いは、これを両立することだといえそうだ。

 2021年2月2日に開催したAzure事業戦略説明会見で、同社は「内製化」の重要性を指摘した。

 会見に登壇した同社の上原正太郎氏(業務執行役員 Azureビジネス本部 本部長)は「クラウド時代の開発思想として、自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)を自分ごととして捉え、内製化を進めることが大切だ。ハードウェアを入れ替えるタイミングでシステムを刷新するという手法では、世の中の流れに対応できない」と話した。

日本マイクロソフトの上原正太郎氏

 「クラウド時代の開発体制は顧客主導であり、顧客自らがDevOpsに取り組む必要がある。日本マイクロソフトは、ローコード/ノーコードツールである『Microsoft Power Platform』(以下、Power Platform)、開発リソースを提供する『GitHub』、トレーニングを提供する『LinkedIn』の他、多くの内製化支援策を用意している」(上原氏)

 2020年以来、日本マイクロソフトはPower Platformによるローコード/ノーコード開発のメリットや重要性を積極的に訴求してきた。事例の一つが神戸市だ。同市の職員は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策業務を効率化するためのアプリケーションをわずか数週間で開発し、職員による対応業務量の削減と住民サービスの向上につなげた。

 今回の事業戦略説明会見でも、ユーザー企業向けの開発支援および育成支援プログラムが紹介された。超短期での実装を目的としたハッカソンをはじめ、アジャイル開発およびスクラム開発のノウハウをハンズオン形式で体験できる「Azure Light-up」、ID管理やゼロトラストセキュリティ、コスト全体最適化、コンプライアンス、スキル計画、利用ガイドラインの整備などを支援する「Cloud Center of Excellence」、Microsoft認定資格プログラム(MCP)およびAzureの資格取得に向けた学習コースの提供や、ゲーミフィケーション要素を用いて自己学習文化の醸成を支援する「Enterprise Skills Initiative & Cloud Skills Challenge」などだ。

Azure Light-upをはじめ、複数の開発支援策や育成支援策を用意する(出典:日本マイクロソフト)

 上原氏は「海外の場合、開発者の割合がユーザー企業とIT企業でほぼ半々と言われる。しかし日本はユーザー企業の中に開発者が少なく、IT企業に7割が集中している。ユーザー企業がクラウドジャーニーを推進する上での課題は、IT人材やスキル不足だ」と話す。

 「育成体質にも問題がある。委託先任せであり、データ分析やデータ活用のナレッジがユーザー企業に蓄積されず、DevOpsが実践できない。さらに、クラウド活用におけるルールやガバナンスが策定されておらず、オンプレミスのシステムをリファクターやリアーキテクト、リビルドできない点も顕在化された課題だ」(上原氏)

 日本マイクロソフトは、これらの課題解決を支援することを急務として「ユーザー企業のクラウドネイティブ開発の支援や内製化の支援、人材育成支援などのプログラムを用意している」(上原氏)。

 同社は「内製化」そのものを支援するツールだけでなく、人材育成や社内実装を支援する仕組みも提供することで、ユーザー企業の内製化を推進しようとしている。

MSによる顧客企業の“内製化推し”は、SIerやパートナーの立ち位置をどう変える?

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ