「2021年に向けて、試合はまだ始まったばかりだ」 AWSが先行する政府向けクラウド市場で、MSが狙う逆転Microsoft Focus

2021年度に向けて、日本マイクロソフトが二大注力事業の一つに位置付けたのが政府や自治体向け事業だ。政府が「クラウド・バイ・デフォルト」原則を掲げる中、クラウドへのニーズや注目度が全国の自治体を含めて加速することは必至だ。ただし、2020年には総務省の「第二期政府共通プラットフォーム」をAWSが受注した。激しい競争にMSはどう挑むのか。

» 2020年12月25日 07時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

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 日本マイクロソフトは、2020年7月から2021年度が始まり、「政府、自治体のデジタルトランスフォーメーション」と、「市場、お客様のデジタルトランスフォーメーション」の2点を注力領域に位置付けた。

 同社はこれまでにも「政府、自治体」を、重点業種の一つとして掲げてきたことはあったが、数多くの業種と横並びという捉え方にすぎなかった。今回のように、2本柱の一方という形で重点業種に掲げたのは初めてのことだ。それだけ同社が本気で「政府・自治体」に取り組んでいく姿勢であることが分かる。その内側では、何が起こっているのか。

「クラウド・バイ・デフォルト」のニーズに部門を超えて対応

 政府が、2018年に「クラウド・バイ・デフォルト」原則を打ち出してから、日本マイクロソフトは準備を着々と進めてきた。その象徴的な取り組みが、2019年9月に発足したデジタル・ガバメント統括本部だ。防衛省を除く官公庁や政府機関、全国の自治体、日本郵政、JAなどを担当する。

 日本マイクロソフトの木村靖氏(業務執行役員 パブリックセクター事業本部デジタル・ガバメント統括本部長)は「クラウドサービスは利活用がキーになる。そして、ユーザー目線で利活用の提案をしていかなくてはならない。政府、自治体に特化しながらも、それまでの組織とは異なり、利活用の提案や人材育成にフォーカスした組織になる」と話す。

 かつて、同社における政府、自治体の担当部門は、公共営業本部の中にあった官公庁営業部であった。その名の通り、官公庁に向けて、マイクロソフト製品の営業活動を行うことが役割だった。だが、デジタル・ガバメント統括本部は、製品を売るという営業活動ではなく、政府、自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援することが重要な役割になる。

日本マイクロソフトの木村靖氏(業務執行役員 パブリックセクター事業本部デジタル・ガバメント統括本部長)

 「クラウドを活用してもらい、DXを支援するためには、営業活動とは異なり、より踏み込んだ関係が必要になる」と、木村氏は話す。その上で、明確にすべきこととして「デジタル・ガバメントとは何か、政府、自治体のDXとは何か、デジタルを活用することで、国民へのサービスはどう便利になるのか、業務がどう効率化するのか」を挙げる。

 「これらを実現するためには、政府や自治体の中に、十分なデジタル人材も育成しなくてはならない。国外での数多くの事例や、日本マイクロソフト自身が経験してきたDXの失敗例や成功例を共有することも重要な役割になる。製品をパートナー経由で販売するのではなく、文化や組織づくり、人材育成、利活用の提案、PoCを共同で推進するといった役割なども担うのがデジタル・ガバメント統括本部になる」(木村氏)

 デジタル・ガバメント統括本部には、業界ソリューションに精通したクラウドアーキテクトや、セキュリティのスペシャリストなどが在籍する。さらに、同社内で「Vチーム」と呼ぶ、技術営業部門やサービス部門などの他の組織の社員が組織を超えて政府や自治体向けに時間を割くケースが増えているという。

 木村氏は「(デジタル・ガバメント統括本部には)今までとは異なるスキルを持った人材をそろえている。各業界に対する深い知識を持った人材が、政府や自治体におけるDX事業に向けて提案したり、ベストプラクティスを紹介したりすることで、日本の政府にどんなものが必要なのかを提言していくことになる」と話す。

 「将来の夢物語を描くのではなく、アーキテクチャに落とし込むための支援が必要であり、クラウドアーキテクトが、システムに落とし込んだらどうなるかを実際に見せて、PoCも支援する。ゼロトラストセキュリティとはどういうものかといったことも見せられる。リフト&シフトだけではあれば他社でもいい。だが、日本マイクロソフトは、クラウドやデジタルに関するさまざまなプラットフォームを活用した提案をし、政府や自治体に寄り添った支援をしていくことになる」(木村氏)

「ゲームは始まったばかりだ」 AWSが先行する政府系クラウド市場で狙う逆転

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