ニチガスはいかに「ごみ屋敷」を捨てたか? メタバースを活用したソリューション事業を支えるDX【後編】「DXリーダーに聞く」 エネルギー×DX(1/2 ページ)

2010年から基幹業務システムのフルクラウド化を開始するなど、ニチガスのDX推進のスピードはエネルギー業界で群を抜く。同社が早い時期からDXを進められた背景と、業務改善の先にある「DXの成果」に迫る。

» 2022年02月14日 08時00分 公開
[田中広美ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 日本の産業を土台から支えるエネルギー業界において、デジタルトランスフォーメーション(DX)はどのように進むのか。DX推進における課題は何か。そして、DX進展後のエネルギー業界はどのような様相になるのだろうか。

 「エネルギー×DX」の第2回となる今回は、日本瓦斯(以下、ニチガス)専務執行役員・コーポレート本部長の柏谷邦彦氏に話を聞く。本稿は前後編の後編として、ニチガスとITベンダーとの協業の在り方と、DXを通じて実現したい事業像に迫る。

参考記事:ニチガスはいかに「ごみ屋敷」を捨てたか? メタバースを活用したソリューション事業を支えるDX【前編】

東京電力の挑戦 レガシーシステムを抱えつついかにDXを進めるか【前編】

東京電力の挑戦 レガシーシステムを抱えつついかにDXを進めるか【後編】

 ニチガスは1955年にプロパンガス事業者として創業し、1966年都市ガス事業に進出した。2015年東京電力と業務提携し、2016年の電力小売完全自由化を機に代理店として電力とガスのセット販売を開始。2018年に電力プラン「でガ割」で家庭向け電力小売市場へ参入し、電力・都市ガス・LPガスを提供する総合エネルギー事業会社となった。

 現在は小売事業の他、LPガスハブ充填基地「夢の絆・川崎」(以下、夢の絆)を運営し、同社基幹システムを基にエネルギー業界向けの業務システムをフルクラウドで提供する「雲の宇宙船」をはじめとしたシステムを他の事業者に開放する。東京電力エナジーパートナーと都市ガスプラットフォームを提供する「東京エナジーアライアンス」を共同運営するなど、プラットフォーム企業としての顔も持つ。

 カーボンニュートラル社会を見据え、これまでのエネルギー供給に加えてEVや太陽光発電、充電設備やエネルギーマネジメントシステムを「エネルギーソリューション・パッケージ」として提供し、スマートハウス、スマートシティーの実現を目指す。

大事なのは「尖っている人」と組むこと

 今回話を聞いた柏谷氏は、他社とのアライアンス(業務提携)を主に担当している。ニチガスがパートナーシップを組むITベンダーは必ずしも大手ではない。雲の宇宙船で業務提携するメタップスや、ガス使用量をリアルタイムに計測するNCU(注)「スペース蛍」にIoT向けデータ通信サービスを提供するSORACOM(ソラコム)、送金アプリ「pring」を提供するpring(プリン)はいずれもベンチャー企業だ。

 柏谷氏はベンチャー企業を協業相手に選ぶ理由を以下のように語る。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ