サティア・ナデラ氏が提唱 デジタルの活用に欠かせない6つのポイントと日本のDX事例(2/2 ページ)

» 2022年11月17日 10時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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4つ目「労働力の活性化」

 ここでナデラ氏は、Microsoftの調査から得られた労働力活性化に関する3つの発見があると指摘した。従業員は「生産的に仕事をしている」と言いながらも、多くのリーダーは組織が生産的であるとは思っていない「生産性パラノイア」があること、ナレッジワーカーが会社に来るのは他人のためであり「人の絆を構築する」ことがリーダーに求められていること、2年以上にわたって仮想的な空間で働いてきたことを理解して、労働力の再活性化や企業文化と従業員のつながりを強化すること、が3つのポイントであり、これらが「社員を定着させること」に大切だとした。

 ナデラ氏は「2019年の仕事のやり方に戻ることはない」と述べ、「『自分で学ぶことができる』『スキルは向上している』『組織内での自分が活躍できる機会が増えている』と感じない限り、社員は組織にとどまらない」と語り、「このように変化した世界を支えているテクノロジーが、『Microsoft 365』や『Microsoft Teams』『Microsoft Viva』だ」と述べた。

 「新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックが終息したら、Microsoft Teamsの使用率は下がるのではないかと思った。だが、ハイブリッドワークは広がり、同サービスの利用は増え続けている。Teamsと統合した『Microsoft Mesh』のような没入型の会議もこれから求められるだろう。ハイブリッドワークの複雑さを解決するには、Teamsのような分散型ワークファブリックが必要であり、Microsoft Vivaによって新たな働き方のなかで従業員エクスペリエンスを高められる」と語った。

 Microsoft Vivaの活用事例としてナデラ氏は渋谷区役所を挙げ、「ハイブリッドワークのためにデータを収集し、ハイブリッドワークポリシーを構築している」と紹介した。

5つ目「協働するビジネスプロセスの採用」

 ナデラ氏は「あらゆる業界において、コラボレーションや協働での作業が重視され、フィジカルとデジタルがつながり、産業用メタバースへの架け橋が生まれる。産業用メタバースは、パンデミックによって主流になり、次へと進化することになる」とし、「Microsoft Supply Chain Platform」を紹介した。

 「Microsoft Supply Chain Centerを利用して、全てのアプリケーション、全てのデータを一つの中央コマンドセンターに取り込み、ワークフローと意思決定を自動化できる。これによって多くの課題を解決できるだろう」

 ここで同氏は、ヤマハ発動機が在庫の回転率を高めるために、Azureや「Power BI」といったテクノロジーを活用していると紹介した他、川崎重工が製造現場でメタバースを利用して作業をしていることや、デジタルツインによる遠隔地からのロボット操作を実現していることを紹介した。

6つ目「セキュリティ」

 ナデラ氏は「サイバー犯罪によって、2025年には約10兆ドルが失われると予測される」とした上で、「これからはゼロトラストアプローチが重要になる。だが、包括的な製品アーキテクチャがなければ、ゼロトラストの構築は困難だ。MicrosoftはIDからエンドポイント、アプリケーション、インフラストラクチャに至るまで、一つのファブリックとして構築でき、毎日何兆件ものデータ信号を基に対策を行う。セキュリティ製品の防御に必要な情報を継続的に提供できる点が強みだ」とした。ここで同氏は、アサヒグループホールディングスが、ゼロトラストアーキテクチャの実現を最優先し、セキュリティ対策を進めていると紹介した。

 講演の最後にナデラ氏は、「これら6つのデジタルの必須事項を通じて、個人がエンパワーされなくてはならない。ビジネスの成功は、あらゆる人々の創意工夫と生産性の向上にかかっている」と述べた。同氏は個人のエンパワーという点で、沖縄大学の事例を紹介した。沖縄大学はAIなどの最新テクノロジーを使って、教育に対して平等にアクセスできるように取り組んでいる。障害のある場合でも、大学でスキルアップでき、DXの担い手になれるように支援しているとナデラ氏は解説した。

 ナデラ氏は最後に「日本の企業や組織が行っていることからインスピレーションをもらうことができる。それらの組織がデジタルテクノロジーを活用し、日本や世界を変えることを期待している」と述べ、講演を締めくくった。

日本の開発者と交流するナデラ氏(出典:日本マイクロソフト提供)

注1:1974年12月にアメリカのMicro Instrumentation and Telemetry Systemsが開発・販売した個人用のコンピュータ

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