DX先進企業と「そうでない企業」は何が違う? KPMGの最新レポートから見えた「7つの特徴」Weekly Memo(1/2 ページ)

DXの先進企業は、そうでない企業と取り組み方においてどこが違うのか。KPMGコンサルティングがまとめた最新レポートから「DXで最重視すべき点」が見えてきた。

» 2023年01月30日 14時15分 公開
[松岡功ITmedia]

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 「DX(デジタルトランスフォーメーション)のメリットを享受している『デジタル成熟企業』はその取り組み方において、他の企業にはない7つの特徴があることが分かった」

 KPMGコンサルティング(以下、KPMG)の浜田浩之氏(執行役員 テクノロジートランスフォーメーション統括・セクターユニット副統括 パートナー)は、同社が2023年1月26日に開いた「KPMG グローバルテクノロジーレポート 2022」に関する記者説明会でこう切り出した。同レポート全体の内容については発表資料をご覧いただくとして(注1)、浜田氏が述べた「7つの特徴」とともに、筆者が注目したレポート内の調査結果もいくつか取り上げたい。

KPMGコンサルティングの浜田浩之氏(執行役員テクノロジートランスフォーメーション統括・セクターユニット副統括 パートナー)

DX投資のキードライバーは何か

 同レポートは世界15カ国の幅広い業種における2200人の経営層(うち、日本は100人)を対象としてKPMGが2022年4〜6月にかけて実施した独自調査を基に、同社が「デジタル成熟企業」と呼ぶDX先進企業の経営層やこの分野の専門家へのインタビュー内容を取り込んでまとめられた。

 まずは、筆者が同レポートの調査結果で注目した5つの点を取り上げる。日本で同レポートの作成に携わったKPMGの尹 暢模(ユン チャンモ)氏(テクノロジートランスフォーメーションマネジメントユニット統括 パートナー)は次のように説明する

KPMGコンサルティングの尹 暢模氏(テクノロジートランスフォーメーションマネジメントユニット統括 パートナー)

 1つ目は、「DX投資のキードライバーは何か」という質問への回答を集計した結果だ(図1)。

図1 「DX投資のキードライバーは何か」への回答の集計結果(出典:KPMGコンサルティングの会見資料)

 上位はグローバルも日本も同じく「成長、効率、回復力の促進」「顧客中心/エンゲージメントの加速」「アジリティとモダナイゼーションの向上」の順となっている。興味深いのは、2番目に多い「顧客中心/エンゲージメントの加速」が示している「顧客体験」(CX:カスタマーエクスペリエンス)について日本の割合がグローバルに比べて少し高いことだ。これについて尹氏は「日本では1番多い回復力(レジリエンス)とCXの両方がDXの最大のキードライバーとなっている」との見方を示した。

 2つ目は「サイバーセキュリティへの投資増加に向けたキードライバーは何か」という質問への回答を集計した結果だ(図2)。

図2 「サイバーセキュリティへの投資増加に向けたキードライバーは何か」への回答の集計結果(出典:KPMGコンサルティングの会見資料)

 この結果で注目されるのは、「顧客体験の向上」がトップになっていることだ。しかも日本はグローバルと比べて高い割合を示している。「CXを向上させるためには、サイバーセキュリティ対策の強化が欠かせないという認識が広がっていることの証左だ」というのが尹氏の見方だ。

 この結果について筆者も一言、「セキュリティ対策はもはや“守り”でなく“攻め”の投資と捉えるべきだ」と述べておきたい。かつてメガバンクの幹部に取材した際、こう言われて理由を聞いたところ、「お客さまとの信頼に直結するからだ」との答えが返ってきた。信頼の獲得はCXを向上させる最たる目的だ。

 3つ目は、「過去2年間でDXは業績にどのような影響を与えたか」という質問への回答を集計した結果だ(図3)。

図3 「過去2年間でDXは業績にどのような影響を与えたか」への回答の集計結果(出典:KPMGコンサルティングの会見資料)

 この結果でまず注目されるのは、「DXが業績アップに貢献した」との回答が多いことだ。DXによる収益性や業績へのプラスの影響が「11%以上増加」との回答はグローバル、日本ともに20%を超えた。過去2年間というコロナ禍の中で、業績全体への直接的な影響というよりも「DXによる投資対効果の高さ」を実感した回答者が多かったのだろう。

 もう一つ注目点を挙げる。尹氏によれば、「11%以上増加」と答えた回答者のうち2割が経営する企業が、KPMGが定義する「デジタル成熟企業」に該当する。この割合が今後どうなっていくかも興味深いところだ。

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