事前学習なしで対話型AIのノーコード開発を実現 Kore.aiが新機能を発表

Kore.ai Japanは、対話型AIプラットフォームの最新版「Kore.ai Experience Optimization Platform 10.0」の提供を開始した。バーチャルアシスタントの設計や開発、管理を大幅に簡素化する機能が盛り込まれた。

» 2023年02月21日 07時00分 公開
[山口哲弘ITmedia]

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 Kore.ai Japanは2023年2月20日、対話型AI(人工知能)プラットフォームの最新版「Kore.ai Experience Optimization(XO) Platform 10.0」の提供を開始すると発表した。Kore.aiは、「対話型バーチャルアシスタント」機能を提供するSaaS(Software as a Service)型のサービスだ。コールセンターやITサービスデスク業務、人事労務業務などの自動化支援に利用される。

 最新版はOpenAIの「GPT-3」などの大規模言語モデル(LLM)や他のジェネレーティブ AI(生成系 AI)技術を使ってローコードで開発できるため、バーチャルアシスタントの設計や開発、管理を大幅に簡素化できるとしている。周辺システムやアプリケーションとの連携も強化し、リリース後の継続的な改善も実施しやすく改良している。

Kore.ai Experience Optimization(XO) Platform 10.0における会話分析とAI学習のイメージ。コールセンターの会話データなどからAIのトレーニングに適したものを特定する(出典:Kore.aiのプレスリリース)

学習データ不要でアシスタント機能を実装、SalesforceやZendeskなどとの連携も

 XO Platform 10.0では、最先端のゼロショットモデルや少数ショットモデルを採用し、LLMやジェネレーティブAIを活用することで、初期の学習データを不要にした。これらの技術は、会話設計や学習データ作成、テストデータ作成、感情による応答の書き換えを支援し、バーチャルアシスタントを作成するための労力を最小限に抑えられるとしている。

 これらのAI関連機能の追加に加え、100種類以上のエンタープライズアプリケーションとの統合もあらかじめ用意した。例えば、「Salesforce」や「Zendesk」「ServiceNow」など100種類以上のエンタープライズアプリケーションと連携できる。その他、自動化の機会をプロアクティブに発見してトレーニングの問題を効率的に特定する「対話インサイトダッシュボード」も提供する。

定義済みアクションにはCRMやHRツールとの連携メニューも含まれる(出典:Kore.aiのプレスリリース)

 具体的な新機能や強化点は以下の通りだ。

 「インスタントフィードバック」(顧客嗜好〈しこう〉の理解)は、自動的にサーベイを生成し、結果や評価の事由を可視化する仕組み。従来は、顧客の問い合わせ体験の満足度を定量化するサーベイを個別に実装する必要があった。インスタントフィードバックを利用すると、顧客満足度(CSAT)やネットプロモータースコア(NPS)、グッドボタン・バッドボタンなどの組み込みテンプレートを使って、自動的にサーベイを実装できる。

 「会話の洞察レポート」は、強化した分析ダッシュボード機能の一つ。インタラクティブなビジュアルマップを使って、発話からトレーニングの問題を効率的に特定する。偽陽性や偽陰性といったAIによる誤判定を迅速に確認して、既存のインテントをトレーニングするかどうか、新しいインテントを作成するかどうかといった判断ができる。

 「回帰テストの自動化」は、壊れた会話フローやワークフローを発見する機能だ。回帰テストを処理するための会話テストケースを作成することで、バーチャルアシスタントの更新対応を最適化する。「フローカバレッジ」と「パフォーマンス分析」によってテストの網羅性なども確認できる。

 「フローヘルスフレームワーク」は、特定のインテントに対してカバレッジとパフォーマンスを分析し、カバーされていないパスを確認して新しいテストを開発するための機能だ。全体的な自然言語理解とフローの健全性を確認し、改善のための必要な変更作業を提案する。

 この他「カスタムダッシュボード」はビジネスユーザーがウィジェットを開発してKPIの測定を支援するノーコードのUIを提供し、より簡単に構築できるようにした。また、 NLU(自然言語理解)については、外部のNLUデータを使えるようにした。別のプラットフォームで実施されていたトレーニングを、XO Platformに移行できる。

 さらに、既成NLUである「Kore.aiゼロショット・マシンラーニングモデル」を使用すると、バーチャルアシスタントを素早く開発可能だ。同マシンラーニングモデルは、数十億の発話で事前トレーニングされており、意味の類似性を使用してインテントを識別する。このモデルを使用することで、初期段階でバーチャルアシスタントをトレーニングする必要性が減り、利用開始までの時間を短縮できる。

 過去の会話記録からバーチャルアシスタントを開発する機能も新たに備えた。ユーザーとエージェントの間のチャットや通話記録からトピックを特定して、インテントとエンティティを抽出する。バーチャルアシスタントに新しいインテントを追加したり、既存のインテントをトレーニングしたりすることで認識率を高められる。

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