「SIerはもう古い?」という問いにNTTデータの本間社長はどう答えたか DX時代のSIerの在り方を聞いてみたWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2023年03月27日 15時00分 公開
[松岡功ITmedia]
前のページへ 1|2       

SIerに求められるビジネスモデルの転換

――すなわち、DXを進めるためには業務とITの両輪での変革が必要だと。その理解は、ユーザー企業でも広がっていると感じておられるか。

本間 お客さまによって認識の差はあるが、全体としての理解度は深まってきたと感じている。先進的なお客さまは、経営トップが全従業員に対して「業務とITの変革は一体で進める」と宣言してダイナミックにDXを進めている。

 私が印象深く感じた事例は、大手小売業のお客さまだ。かつては実店舗とeコマースで、在庫管理も倉庫もサプライチェーンもそれぞれ別に取り扱っていたが、今ではITで一本化して処理することによって事業効率が大幅に向上した。これまで2本だった業務プロセスが1本になった、分かりやすいケースだ。

――NTTデータと言えば、公共や金融の分野における社会インフラやデータ通信を中心とした事業のイメージが強い。企業のDX支援も積極的に手掛けていくお考えか。

本間 当社は1988年にNTTのコンピュータ事業部隊が分離独立して設立されたという背景がある。当初は事業領域における制約もあり、ご指摘の通り公共と金融の分野におけるインフラサービスが中心だった。

 その後、さまざまな産業の法人事業へと広げていったが、SI事業は競合がひしめく激戦市場だったので、当初から新しいサービスを提案して仕事を少しずつ広げることに注力してきた。DX支援はそうした新しいサービスの提案をさらに進展させる側面もあるので、当社としてはむしろ得意分野のつもりで積極的に取り組んでいる。

――「SIerはもう古い」というイメージがある。本間社長はどう見ておられるか。

本間 それは、これまでのSIerによる受託開発型のビジネスモデルを指しているのだろう。変革のスピードが求められるDXでは先に述べたように、お客さまと共にWhatについて考える。私たちも積極的に提案する中で方向が決まれば、有効なサービスを組み合わせてどんどん実践していくというビジネスモデルに変えることが重要だ。

 ただ、SIについては対象となるシステムがオンプレミスだろうがクラウドだろうが、インテグレーションする必要がある。私たちの業務を表す言葉として今後も大事にしていきたいと思っている。

――とはいえ、SIerという代名詞がイメージとして古いとみられるのなら、ここは一つ、その代表格である貴社が新しい代名詞を打ち出して、ユーザーにアピールしていけばどうか。ITからDXへとユーザーニーズが変わりつつある今こそ、チャンスではないか。

本間 今回の取材はSIerとしてという話だったのであえて言わなかったが、実は私たちNTTデータはSIerとしてほとんど発信していない。SIerというのはかつての通商産業省(現・経済産業省)が作った言葉だ。私たちは郵政省(現・総務省)管轄のNTTから出てきたことから設立当初は認定資格をもらえず、その後3年ほどたって取得できた。その間は自分たちのことを「バリュークリエイター」と発信していた。設立当初はとりわけ自分たちのことを世間に売り込まないといけなかったので、この代名詞を広めていた。

 そうした経緯もあり、SIerが古いイメージになっているのならば、違う代名詞を使っても全く構わない。ただ、他に適切な言葉があるかというと、なかなか難しい。良さそうな代名詞があれば、ぜひ提案してほしい。


 以上が、本間氏とのやりとりだ。代名詞については「ITサービス企業」との分類もあるが、範囲が広すぎるので今回のインタビューでは話題にしなかった。「代名詞など、どうでもよい」という意見もあろうが、筆者は「名は体を表す」と考えている。

 SIerは今後、どう呼ばれるようになるのか。個々の業態転換でも変わってくるだろう。自分が「何者であるか」を明示することは、顧客から引き続き信頼を得るための大事な要件ではないだろうか。

 ちなみに、インタビューの最後に、「デジタルバリュークリエイター、略してDVCというのはどうか」と提案してみたところ、本間氏からは「う〜ん、そうねえ〜」と微妙な返事があったことを付記しておく。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ