「ChatGPT」を頼れる先生に 生成AIを“教師”として使ってみた「AIが卵より安くなる時代」に向けて

皆さんは「ChatGPT」をどのように使っていますか? 「通訳」としての利用方法を紹介した前回に続き、今回筆者は「教師」としての活用法を提案します。ChatGPT先生が発揮する“威力”とは。

» 2023年11月08日 08時00分 公開
[永田豊志ITmedia]

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この連載について

AI(人工知能)を仕事で利用するのが当たり前になりつつあります。高価だったAIがコモディティ化して「卵よりも安く利用できる」近い将来、「副操縦席」に追いやられないために、われわれは何をすべきでしょうか。

AIをビジネスで生かすべく日々実践している永田豊志さんが、ビジネスパーソンの生産性向上に役立つ情報と、そこにとどまらない、将来を見据えた挑戦のためのヒントをお届けします。

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 「ChatGPT」などの生成AIをCoPilot(副操縦士)としてうまく使って、生産性を高めるということについては、以前もお話ししました

 今回は、生成AIを補佐役ではなく先生役としてあなたの学習をサポートしてもらうための方法をご紹介します。生成AIを活用することで、マンツーマン授業を簡単に実現できます。

 人間の先生のように授業料が発生したり、先生のスケジュールに合わせたりといったことはありませんから、あるテーマをサクっと学習したい場合に威力を発揮します。

「ChatGPT先生」の威力は? プロンプトをどう書くべきか

 生成AIに先生役をやらせる場合のプロンプトを作る際は「状況設定」や「テーマの絞り込み」が重要です。また、どのような形式でやりたいか、「一問一答のクイズ形式」がよいか、それとも記述した回答を“先生”が改善するような「添削形式」がよいのかなどを事前に決める必要があります。

 それでは、具体的にやってみましょう。

 プロンプトとして以下のような文章を入力します。

 「ChatGPTにあるテーマで先生役をやってもらいます。生徒の入力に合わせて反応して解説したり、理解力の高い生徒には関連するテーマやさらに難易度の高い問題を提示したりして、生徒一人一人の学習をサポートする方法を教えてください」

 すると、ChatGPTはこう返してきました。

「事前に決めておくべきことを幾つか列記します。

目的の設定:最初に、どのテーマやトピックについて学びたいのかを明確にします

例:数学の一部領域、科学の特定のトピック、文学の解析など

生徒の理解度の確認:生徒に簡単な質問をしたり問題を出したりして、その反応や答えを基に理解度を判断します

<中略>

フィードバック:生徒の回答や反応を元に、正解や改善点を指摘します。必要に応じて再度説明を行うことも可能です

繰り返しの学習:同じトピックや類似の問題を何度も繰り返して学習することで、生徒の理解度を高めます

学習の進行状況の追跡:進行状況の追跡機能はChatGPTに組み込まれていません。生徒や先生が進行状況を記録することが推奨されます

ChatGPTが発した「カリキュラム作成のための重要な質問」

 そこで、次のようにプロンプトを追加します。

 「では、上記の方法で、私が生徒だと思って先生役を務めてください。テーマは「ビジネス交渉における英語表現」です。よろしくお願いします」

 すると、「ChatGPT先生」から次のような質問が届きます。

「了解しました。ビジネス交渉における英語表現を学習することになりましたね。まず、現在の理解度や知識を確認します。

質問1: ビジネス交渉で使う基本的な英語表現を3つ挙げてください

質問2: あなたがビジネス交渉で英語を使用する際、最も難しいと感じる部分は何ですか

これらの質問への答えを参考に、今後の指導の方向性を決めます。

 学習において生徒のレベルに合わせたカリキュラムを作成することは極めて重要なポイントです。このような実力確認テストを挟むことで、レベル合わせが容易になると思います。

 筆者が回答を入力すると、ChatGPTは次のように反応しました。いよいよ学習スタートです。

ありがとうございます。あなたの回答から、ビジネス交渉において一般的な英語表現に既に慣れ親しんでいることが分かります。

また、交渉中に相手の提示条件に関連するリスクやリターン(利益)を迅速に理解することが課題であると了解しました。

それでは、この課題に対応するための英語表現やフレーズを学び、実際の交渉における使用方法を考えてみましょう。


リスクやリターンに関する疑問を投げかける表現

"Could you clarify the potential risks associated with this proposal?"

"What do you see as the primary returns from this approach?"

"Are there any hidden risks we should be aware of?"


自分たちのリスクやリターンに関する考えを伝える表現

"From our perspective, the main risk is..."

"We anticipate the returns to be..."

<以下略>

自身のスキルアップだけでなく、研修や社内教育にも

 このようにChatGPTを活用すれば、生徒一人一人の理解度に応じた学習サポートが可能です。

 一般的なテーマから特定業務のフローまで、設定次第で自分自身の学習だけでなく社内教育にも幅広く使えると筆者は考えています。

 教育分野におけるIT活用は、これまでは映像コンテンツの配信やビデオ会議形式での授業、教科書や問題集のデジタル版への置き換えなど、多くが「デジタル化」の範囲に限定されていたように思います。

 それが生成AIを活用することによって、学校や職場における一人一人のレベルに合わせて目的別カリキュラムを容易に作成できるのは、とてもインパクトのあることではないでしょうか。

 研修や社内教育は、成果が見えにくかったり、運用に多くの人的資源を必要したりするために大手企業以外できちんと実施している企業は少ないように思います。

 ChatGPTをはじめとする生成AIを「先生」として活用できる今、リスキリングやパフォーマンスアップの仕組みを作る絶好の機会が到来したのかもしれませんね。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

知的生産研究家、起業家、上場企業の経営者。現在、DX支援クラウドを提供する株式会社ショーケース(東証3909)とリユースモバイル事業を運営する日本テレホン株式会社(東証9425)、2社の上場企業の経営者。

企業経営と並行し、新規ビジネス開発、働く人の生産性向上をライフワークとした執筆、講演活動などを行う。

自著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』(ソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)、『会社では教えてもらえない仕事がデキる人の資料作成のキホン』(すばる舎刊)がある。

著書一覧:https://www.amazon.co.jp/s?k=%E6%B0%B8%E7%94%B0%E8%B1%8A%E5%BF%97

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